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緊急事態条項考(上)弁護士・小口幸人さん
時代の正体〈234〉震災「だし」に改憲 

時代の正体 神奈川新聞  2015年12月11日 12:37

改憲を訴える初の街頭演説で、緊急事態条項創設の必要性を強調した谷垣幹事長(中央) =5月20日、JR有楽町駅前
改憲を訴える初の街頭演説で、緊急事態条項創設の必要性を強調した谷垣幹事長(中央) =5月20日、JR有楽町駅前

 憲法改正論議の軸に「緊急事態条項」新設が急浮上してきた。東日本大震災の経験を踏まえ、憲法に盛り込む必要性があると政府・与党から声が上がる。しかし、震災や豪雨の被災地となった自治体の弁護士会など17会は「行政府への強度の権力集中と人権制約を伴い、立憲主義に抵触する恐れがある」とする声明を発表。「創設は不要」と真っ向から反論している。

 舞台は7カ月前にさかのぼる。

 5月20日夕、東京・JR有楽町駅前。自民党の谷垣禎一幹事長は宣伝カーの上で、マイクを握っていた。

 「私たちは東日本大震災を経験致しました。3月11日です。あの年、統一地方選があったんです」

 同党の憲法改正推進本部が初めて行った街頭演説会。船田元・本部長、礒崎陽輔事務局長らが脇を固めていた。

 「ところが、津波を受けて、住民もあちこちに避難して選挙なんぞやっている暇がなかった。被災地の三つの県の県議会議員たち、あるいは市長さんや村長さんたち、任期が来るんだけど選挙ができない。村長さんがいなくなった、市長さんがいなくなった。あるいは議会で議論をしようにも、議会で予算を可決しようにも、議員さんがいないようでは復興ができないではないか」

 それゆえ非常事態の際、4年間の任期を引き延ばす法律を成立させたと説明。そして続けた。

 「国会議員の任期は憲法で定められている。同じようなことが起きて、国会議員の任期が切れてしまった時、議員がいなくなってしまいます。私はこれは明らかな憲法の不備だと思うんです」

 宣伝カーの周りでは、自民党の職員が憲法改正の必要性を訴える漫画パンフレットを配る。子ども連れの母親たちが次々と受け取っていく。

 谷垣氏は訴えた。

 「何か起きたときにたちまち困ってしまう問題についてはまず提起をして、国民の皆さまにご判断を仰いでいく。私たちは(憲法改正については)1年生ですから、背伸びをせずに、失敗しないようなところから進めていくことが必要だと考えています」

 憲法改正は緊急事態条項の新設から-。20分超にわたる演説で強調した。



 

不 要

  第二東京弁護士会の小口幸人さん(37)は東日本大震災が起きたとき、岩手県宮古市で弁護士として活動していた。全国で初めて、弁護士による避難所相談を実施。市長や危機管理課の職員らと被災者支援を手掛けた。

 そうした経験から「災害に対応する法律はすでに十分整備されており、不要と考えています」と主張。むしろ「現場に権限を下ろすことが最も重要」と痛感したという。

 「宮古市の隣の山田町役場では、自衛隊員や国の役人が集まる中、町長が次々と指示を出しているのを目の当たりにしました。現地を見ていない国の判断は、現場の要望とズレることも多く、何より遅れがちだった。被災状況が次々と明らかになる中で、上の判断を待っていることはできません。現場が独自に判断し、対策を取ることが大事だったんです」

 実際、災害救助法や災害対策基本法は緊急事態に備え、都道府県知事や市町村長に強制権を与えている。

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