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「5Rooms 感覚を開く5つの個展」県民ホール

カルチャー 神奈川新聞  2017年01月11日 15:42

丸山純子のインスタレーション「名もなき船のモニュメント」=県民ホールギャラリー
丸山純子のインスタレーション「名もなき船のモニュメント」=県民ホールギャラリー

 頭で考えるのではなく、作品と向き合ったとき心で感じ、心に響くかどうかをテーマにした現代美術の展覧会「5Rooms 感覚を開く5つの個展」が、県民ホールギャラリー(横浜市中区)で開催中だ。5人の現代美術家の作品約70点が個展のように一作家ごとに並び、さまざまな表現方法で見る者の感覚に訴えてくる。

死のイメージ


 横須賀市内に制作拠点を置く丸山純子(40)はせっけんを素材とした大型のインスタレーション「名もなき船のモニュメント」に挑んだ。廃油から作られた粉せっけんが、廃材でできた長さ約6メートルに及ぶ巨大な朽ちた船の周囲にまかれている。


「制作中は感情移入した」という丸山純子
「制作中は感情移入した」という丸山純子


 丸山は「ずれと共鳴を併せ持つ存在なんてこの世にないと思っていたが、実はせっけんがそうだった」という。「せっけんは水と油とカセイソーダという相反するものや劇薬になりうるものでできている。それが人の役に立つ物になり、汚れを洗い流す。せっけんはあの世とこの世をつなげるイメージに結びつく」

 沈没した船もまた、あの世とこの世を行き来する存在だ。「船自体は沈んでいるけれども、そこから浮き上がってくるものがある」

 抑えた照明の下でほのかに白く見えるせっけんと静かに横たわる難破船。そこには死のイメージが漂う。毎日ジェットコースターに乗っているように旅している、そんな感覚で過ごしている中から生まれてきた“物語”に、丸山自身「ぞぞぞぞ」とする思いにとらわれたという。

点にこだわり


 横浜美術館の市民のアトリエで版画を指導した経験を持つ版画家の小野耕石(37)は、シルクスクリーンの手法を使い、手描きした細かな点を版におこし、100回ほど刷り重ねることで、印刷面に立体的なインクの層を生み出す。


小野耕石の版画作品「Hundred Layers of Colors」が並ぶ一角
小野耕石の版画作品「Hundred Layers of Colors」が並ぶ一角


 「もともとは油絵を描いていた。夜中に制作していたらガが飛んできて、その羽の鱗粉(りんぷん)がだんだん美しく見えてきた。これを絵の具を使って感覚的に表現したい」と独自の表現方法を開拓した。

 100回近くも刷っていると水分によって紙がゆがんだり、うまく点が刷れない部分が出たりしてくる。「そのゆがみも表情として楽しむ」と小野。途中で色を変えることで、見る角度によって見え方も変わる。

 紙にとどまらず、かつて命を宿したものにも点描を施す。セミの抜け殻やネコの頭蓋骨に、絵の具を入れた注射器を使ってカラフルな点を細かく描き入れた。

 「命が抜け出したものに僕が使っている絵の具を移植したら、別の生命のようになっていくのでは」


点の重なりにこだわる小野耕石
点の重なりにこだわる小野耕石


 小野は現代美術が商品化された大量生産品になっていきつつあると危惧する。

 「芸術はもっと泥くさくて、その作品にどういう思いや苦しみがあったかを見せるもの。人が作った形跡のあるものに意味がある」と、入念に手を掛けて生み出す作品にこだわる。

 他に紙のように薄い磁器で繊細な立体作品を生み出す出和絵理、拾った木の枝などを漆で遊び心のある作品に仕立てる染谷聡、日常の忘れられたものを切り取ってみせる聴覚障害のある写真家・齋藤陽道(はるみち)が参加。

 21日まで。一般700円、学生と65歳以上500円。問い合わせは同ホール電話045(662)5901。


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