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美ら海の声、耳ふさぐな 後援取りやめ相次ぐ中、上映会

社会 神奈川新聞  2015年11月30日 03:00

沖縄の現状を描いた映画の一場面(c)2015『戦場ぬ止み』製作委員会
沖縄の現状を描いた映画の一場面(c)2015『戦場ぬ止み』製作委員会

 沖縄の米軍新基地建設に反対する住民たちの生きざまに迫る三上智恵監督(51)のドキュメンタリー映画をめぐり、自主上映会の後援を取りやめる動きが県内自治体で相次いでいる。行政の対応に異論の声が上がる中、12月6日には横浜市中区のシネマ・ジャック&ベティで上映される。映画館支配人は「手話弁士をつけて沖縄からのメッセージを届けたい」と意気込んでいる。

 上映するのは、三上監督の最新作「戦場(いくさば)ぬ止(とぅどぅ)み」(2015年公開)。サンゴが広がりジュゴンが暮らす美しい海でボーリング調査が始まった1年前の名護市辺野古が舞台。工事を止めるために座り込む住民と機動隊が対峙(たいじ)し、もみ合いが起きる。

 「私をひき殺してから行きなさい」。凄惨(せいさん)な沖縄戦を生き抜いた85歳の「おばあ」が工事車両に身を投げ出す。戦争につながる基地を造らせるわけにはいかないとの思いにカメラが寄り添う。

 「戦場ぬ止み」の自主上映会が全国各地で開かれる中、茅ケ崎市は10月、地元団体からの後援名義の使用申請を不承認とした。担当者は「映画には国政や特定の政党を批判する表現が含まれるほか、三上監督のトークショーが予定されていたことから中立性に欠けると判断した」と説明する。政治的な理由で後援を認めないのは初めてという。

 同市では他の自治体と同様に、特定の政党や宗教を扱ったり、営利目的のものは後援を認めない基準を定めており、担当課がその都度判断している。

 申請当時は辺野古新基地問題で対立する菅義偉官房長官が沖縄県知事を訪れ、集中協議を行った時期。担当者は「政局の動きも踏まえて、総合的に中立性の判断をせざるを得ない」としている。

 同監督の前作「標的の村」(12年公開)は、沖縄本島北部・東村高江への米軍新型輸送機オスプレイ配備やヘリ基地建設に反対する住民らを描いた記録映画。2月に横浜市西区で開かれた上映会について、一度後援を承諾していた同市教育委員会は、市民の反対意見を受け名義の使用を控えるよう主催者に求めた。

 市教委は「社会的に賛否の分かれるような行事に後援名義を出すことは、中立性の観点から不適切」とし、今後はより厳格に審査する考えを打ち出した。

 東村高江の活動を首都圏で支援するグループ「ゆんたく高江」に加わる川崎市在住の浦野薫さんは、横浜、茅ケ崎市が強調する「中立性」そのものを疑問視する。「国が、弱い立場の沖縄の人たちを相手取り威圧的な裁判を起こす『スラップ訴訟』を仕掛けているのが実態。政権の意向に過敏に反応する自治体の姿勢は沖縄の人たちだけでなく、国民の多様な活動を萎縮させることにつながりかねない」と指摘する。

 ジャック&ベティ支配人の梶原俊幸さんは「昨年は『標的の村』を手話上映し、ほぼ満席になった。映画が持つ力を遮っている障害をなくしたい」と話している。手話上映会はろう者と映画を楽しむ会、かながわバリアフリー映画祭実行委員会などが主催。「父と暮せば」(5日)、「ヨコハマメリー」(5、6日)も上映される。

 前売り券1300円。問い合わせは、シネマ・ジャック&ベティ電話045(243)9800。


沖縄の現状を描いた映画の一場面(c)2015『戦場ぬ止み』製作委員会
沖縄の現状を描いた映画の一場面(c)2015『戦場ぬ止み』製作委員会

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