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人口減…官民で取り組み
縮むまちで「特定空き家」初の解体 地域資産どう生かす

社会 神奈川新聞  2015年10月27日 09:58

老朽空き家周辺の木を伐採する解体業者 =26日午前9時5分ごろ、横須賀市東浦賀1丁目
老朽空き家周辺の木を伐採する解体業者 =26日午前9時5分ごろ、横須賀市東浦賀1丁目

 人口減少に直面する街にとって、老朽化した空き家対策は深刻な課題だ。横須賀市は26日、空き家対策特別措置法を5月の全面施行後初めて適用し、倒壊の恐れがある「特定空き家」の解体に着手した。だが増える空き家に、先細る地域社会への不安を住民は募らせる。人を呼び込む地域の資産として再活用できるか、さまざまな試みが始まっている地域もある。 

 横須賀市東浦賀1丁目の斜面地にある木造平屋の空き家で26日朝、解体作業が始まった。

 建築面積約60平方メートルの半分近くが崩落。外壁の鋼板はさび付き、人ひとりがすれ違うのが精いっぱいの生活道路を脅かす。「不審者が泊まり込んだり、火をつけられたりしたら困ると思っていた」。近所に住む女性が胸をなで下ろした。

課題も多い


 倒壊の恐れや衛生、景観面で著しく問題がある空き家は特措法で「特定空き家」とされる。市内には9月現在で61件。解体を指導・検討している物件も3戸ある。市建築指導課は「建物と土地の所有者が違ったり、権利が複雑に入り組んでいたりと課題も多い」と、現場レベルで運用を検証する必要性を指摘する。

 かつて造船で栄えた浦賀には、入り江を取り囲むように丘陵地が連なる。1970年前後には開発の波が斜面を登っていった。その転入者も今では高齢化。足腰の弱った人が暮らすのに楽な地形ではない。地元町内会の赤穂正明副会長(66)は「一人暮らしのお年寄りが家族に引き取られる例もある。今後も老朽空き家が出てくるかもしれない」と懸念する。

増す財政負担


 人口が減れば空き家も増え続ける。「2~3年も塩漬けの物件もあるが、更地にするにもお金が掛かる」(不動産関係者)。今回の解体費約150万円は横須賀市が負う。今後も代執行が増え続ければ、財政の負担が増す。
 人口減と向き合う南足柄市は、昨年3月から「空き家バンク」を開始。これまで9件を登録している。成約は1件のみだが、担当者は「市を通さずに不動産会社を通じて進めている例もある。県西地域2市8町で連携し、広域的に情報共有できる取り組みを模索している」と説明する。

 空き家や空き店舗の活用に注力する不動産業「旧三福不動産」(小田原市栄町)では、2カ月に1件の割合で仲介を成約させている。顧客エリアは三浦半島にまで広がる。

 山居是文代表取締役(37)は、「まだまだ空き家や空き店舗は多くあり、需要はあるはず。もっと実績を積んで情報を発信したい」と話している。

全国272万戸 再生困難


 国土交通省は26日、賃貸や売却物件を除く全国の空き家のうち、272万戸が耐震性の不足や立地の悪さから活用が難しいとする推計を明らかにした。改修には多額の費用がかかるとみられ、国交省は解体や建て替えを促す施策を検討する。48万戸は、簡単な手入れで再生可能だとして、活用を後押しする方針だ。

 総務省によると、全国の空き家は2013年10月1日時点で820万戸。そのうち賃貸・売却用の住宅や別荘を除いた一戸建て、共同住宅計320万戸について(1)耐震性が十分(2)大規模な傷みや破損がない(3)最寄り駅からの距離が1キロ以内-を条件に活用可能な物件かどうかを分類した。

 3条件のいずれも満たしているのは48万戸。それ以外は、1981年以前の旧耐震基準で建てられていたり、最寄り駅から遠く交通の便が悪かったりして、活用困難とされた。

 また、国交省が空き家の持ち主に取得経緯を調査したところ、親族などからの相続が56・4%で、新築や中古での購入を上回った。

 国交省は、今後の住宅政策の方向性を定める住生活基本計画の改定作業の中で、空き家対策を柱の一つにする考え。16年度税制改正要望でも、空き家を相続した際の撤去やリフォームの負担軽減策を求めている。


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