
金沢文庫、称名寺、旧伊藤博文金沢別邸…。国宝や重要文化財など市内最多の100を超す文化遺産を保有する横浜市金沢区。管轄する金沢消防署が、文化財を火災から守るための「防御計画」を策定した。市内初の試みで、建物の特徴や文化財の保管位置、消火時の注意点などについて、各施設ごとの対応策を明記。歴史的資産とまちの安全を守るため、防火管理の徹底とともに不測の事態に備える。
「境内への侵入は一方向」「境内の通行路は樹木が張り出している」
鎌倉時代に建てられた国指定史跡の称名寺(金沢町)。金沢消防署がまとめた計画書には、寺内にある12の文化財の概要をはじめ、消火時の具体的な注意点が記されている。写真と周辺図も添付している。
同消防署はことし6月、区内の文化財83カ所の調査をスタート。約3カ月かけ、それぞれの地形や水利状況、建物の特性など多岐にわたる項目を調査した。現地視察した同署の宇多範泰警防担当課長は「文化財を運び出す際の優先順位も考えることができた」と振り返る。
同区では2013年10月に市指定文化財の旧川合玉堂別邸(富岡東5丁目)が全焼、閉園した。歴史的価値の高い文化資産を失った苦い経験を繰り返さないため、同消防署と消防団をはじめとする地域が一丸となって防火対策を進める動きが加速。定期的な訓練にとどまらず、各施設の特徴に応じた実践的な対応策としてまとめた。
同消防署の小出健署長は「貴重な文化財を将来に残すための大きな一歩。文化財を守るモデルとして、市内外に広げていきたい」と話している。