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業界の構造背景か 横浜・マンション傾斜

社会 神奈川新聞  2015年10月24日 03:00

 横浜市都筑区のマンション傾斜問題で、建設業界の関係者からは、ため息とともに「業界特有の問題も一要因」との声が漏れる。一方で欠陥マンションに詳しい専門家は「施工主などにも重大な責任がある。被害者のような態度は許されない」と指摘する。


傾いていることが判明した大型マンション=横浜市都筑区
傾いていることが判明した大型マンション=横浜市都筑区

◆工期の“圧迫”
 「少しおかしいと思う施工指示がきても、工期に響くような問題は、なかなか上(発注元)へは言えない」。くいの施工や基礎工事などを手掛ける横浜市内の建設業者幹部が重い口を開く。

 重層的な下請け構造で成り立つ建設業界。工期の重要性は計り知れない。まして、施工の初期段階であるくいや基礎工事は「与えられた工期内でなんとか終わらせようとする」という。

 業界の特殊性を指摘するのは横浜市内にあるゼネコン幹部だ。「建設業界は技術の高度化に伴って、専門が極度に細分化されている」。くい施工や外壁施工、配筋など、専門工事業者に分業されているといった具合だ。

 「一つの現場を終えた業者は、全体工事が終わる前に次の現場へと渡っていく。手掛けている物件で工期が延びれば当然、次の工事を引き受けられなくなる」

◆需給のねじれ
 問題のマンションが着工した2005年は、分譲マンション需要の高まりに伴い着工戸数が急増している最中だった。翌06年は国土交通省の建築着工統計で過去2番目の高水準だ。一方で、国交省は当時、公共工事を減らし建設業者数の減少を政策的に誘導していた。農業や介護事業といった異業種への転換をも呼び掛けていた時期と重なる。


全国の分譲マンションの着工戸数推移
全国の分譲マンションの着工戸数推移

 ゼネコン幹部は当時を振り返り「中小の建設業者や専門工事業者で、廃業した会社は少なくなかった。一方で民間マンションの需要は高まり、それまで以上に効率的に仕事を回さなければ会社を維持できないという業界構図が浸透した時期でもあった」と話す。

 さらに、業界関係者が特に注目するのは、今回のマンションに使われた「既成くい」だ。

 この工法は、ボーリング調査によって強固な地盤(支持層)までの深さを測り、それを図面にした上で、着工の2~3カ月前にくいを発注。事前に製造した上で、現場へ入れる。

 「くいを打っていた重機のオペレーターは、支持層にくいが届いていないことに気付いたはずだ。だが既成くいの場合、継ぎ足したり、造り直せば工期は確実に延びる。そうした不都合な状況が不都合ゆえに、施工主に伝わらなかったのではないか」とゼネコン幹部はみる。

◆入念な検証を
 「施工主や設計会社にも当然責任はある」。こう言及するのは、05年に発覚した構造計算書偽造問題で被害者相談にも対応した、1級建築士の田中正人さん=よこはま建築監理協同組合専務理事=だ。

 データ改ざんを行った担当者に重い責任があることは当然とした上で「施工主や設計会社は、くいの施工について報告を受け確認し、書類に押印した上で自治体へ届け出ているはずだ。不正を見抜けなかったとしたら確認を怠っていたことになる。被害者のような対応を取ることは許されない」と指摘する。

 田中さんは「今回の問題をめぐっては、発覚している以外にも、踏むべき手続きを無視した当事者がいる可能性が高い。入念な検証が欠かせない」と話す。


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