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旧別荘地で広がる景観保全「協定」 藤沢・鵠沼地区

話題 神奈川新聞  2015年10月24日 03:00

松並木の景観が残る藤沢市の鵠沼地区
松並木の景観が残る藤沢市の鵠沼地区

 かつての別荘地の街並みや景観を保全しようと、建築に独自の基準を設けた住民協定を結ぶ動きが、藤沢市鵠沼地区の自治会の間で広がっている。建築物の高さや敷地の分割、緑化率などを定める取り組みが、周辺の自治組織へ波及した。専門家も「自治会レベルで協定が連鎖していく事例は珍しく、住民主体のまちづくりの好例」としている。

 住民協定の動きが見られるのは、小田急江ノ島線と江ノ島電鉄に挟まれた6自治会(計約1・2平方キロメートル、会員世帯数計約4千)。すでに3自治会が締結、残りの3自治会が検討を進めている。

 一帯は別荘地として栄え、一軒当たりの敷地面積は広く、松や桜の木が多く植えられていた。しかし昭和50年代から土地を分割する手法で宅地開発が進行。第1種低層住居専用地域の高さ規制10メートルいっぱいに集合住宅が建てられる事例も増え、緑やシンボル的な巨木が失われていった。

 このため、6自治会の一つ「ニコニコ自治会」は2003年度、まちづくり担当役員を設け、翌年度に自主ルールづくりの検討で合意。2年かけて具体案を練り上げ、06年度に住民協定として運用を始めた。

 主な内容は▽建物の高さ8メートル以内▽敷地規模50坪以上▽緑化率20%以上▽既存樹木の保全-など。開発業者には着手前に自治会への情報提供を求める規定も盛り込んだ。行政には、業者が開発初期段階で必ず目を通す都市計画縦覧図に協定の当該地域であることを明記するよう働き掛けた。

 協定には直接の根拠法令も罰則規定もないが、自治会側を支援した慶応大の高橋武俊特任講師は「半ば公的な組織でもある自治会の規定を業者は無視しにくい」と指摘。これらの規定は絶対的なものではなく、必要に応じて自治会と業者が協議した結果、柔軟に応じる場合もあるという。

 過去には、津波襲来時の避難場所として住民に開放する代わりに、高齢者施設の建設を高さ10メートルで許可した事例もあった。高橋特任講師は「協定はよそ者を閉め出すためではなく、互いに納得して協調するためのツール。業者の持つ創造性が刺激になり、新たなまちづくりのヒントになるケースもある」と語る。

 ニコニコ自治会の取り組みを契機に、07年度には6自治会合同の勉強会がスタート。11年度には五友会、15年度には鵠沼藤が谷会の2自治会でも締結にこぎ着けた。業者が自社広告で協定に触れ、住環境を売りにする好例も出てきた。

 6自治会勉強会で幹事を務める五友会の佐藤芳明副会長は「ある日突然着工し緑が失われる事態が避けられるので、事前に情報が届く意味は大きい。住民と業者が懇談の場を持つことで着地点も見いだしやすくなり、協定は住民にとって大きな盾になっている」と効果を強調している。


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