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原子力艦災害の避難基準厳格化へ 原発並みに統一、政府方針

社会 神奈川新聞  2015年10月22日 03:00

 米海軍横須賀基地(横須賀市)に配備されている原子力空母をめぐり、政府は原子力艦の災害時の避難判断基準を厳格化する方針を固めた。2004年策定の原子力艦災害対策マニュアルの基準を、11年3月の東京電力福島第1原発事故を受けて改められた災害対策指針の基準に合わせて統一する。河野太郎防災担当相(衆院15区)は21日、神奈川新聞の取材に、11月にも開く検証作業委員会での見直しを提案する意向を示した。

 原発事故を受けて原子力規制委員会が改定した原子力災害対策指針では、放射線量が毎時5マイクロシーベルトを超えた場合、半径5キロ圏内で即時退避などとする判断基準を示した。一方、原発事故以前に策定されていた現行の原子力艦災害対策マニュアルでは、毎時100マイクロシーベルトの線量を計測した場合、空母から3キロ圏内を屋内退避と定めるなど、緩い基準となっている。

 このため横須賀市が基準を統一するよう国に要請。内閣府と外務省は9月、原子力艦の災害対策マニュアルを検証するため、有識者や関係省庁職員で構成する作業委員会を設置することを市に報告していた。

 作業委は11月にも初会合を予定しており、冒頭で判断基準の見直しを提案する。異論が出なければ、他項目の検証に先駆けて改定を決定するという。災害時に避難を促す範囲についても、作業委で議論を重ねるという。

 河野防災担当相は「(二つの)基準が違うことに合理的な意味はない。原子力艦災害マニュアルは、もともと(原発など)事業用の指針に合わせて作られており、原発事故を受けて指針が改められた際に一緒に合わせればよかった。当然やらなければならないことが遅くなった」と述べた。


■二重基準解消へ前進
 原子力空母を抱える基地の街・横須賀市にとって、原子力艦の災害に関する国の二重基準の解消は、ここ数年の大きな課題であり続けた。原発事故を受け、原子力規制委は新たな災害対策指針で事故対応を策定したが、原子力艦は対象外となっており、市による原子力艦事故時の地域防災計画策定にも影響していた。

 災害時の避難基準について方向性を示すよう吉田雄人市長が外務省に要請したのは2013年4月からだが、国の対応は鈍く、その後も市は要請を繰り返してきた。国が動いたのは、原子力空母ロナルド・レーガンの配備を目前に控えた9月。最初の要請から2年半もかかった背景には、規制委が原発の再稼働審査に多くの人材を割いていたことなどがあった。

 ただ、米軍は原子力艦のトラブルは、ファクトシート(説明文書)に基づき基地外への影響はないとする立場で、日本政府の認識との間には大きな溝が横たわる。今月1日に空母R・レーガンが入港した際にもボルト艦長は原子炉を「100パーセント安全」と言い切った。日米安全保障体制との兼ね合いが、国内基準の整合性に残る矛盾の根本にある。


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