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がん最前線 小児がん(上) 笑顔取り戻した家族

社会 神奈川新聞  2015年10月20日 09:34

毎年検査を続けながらも学生生活を楽しんでいる細木さん(右)と母のゆきさん =県立こども医療センター
毎年検査を続けながらも学生生活を楽しんでいる細木さん(右)と母のゆきさん =県立こども医療センター

 「小学生のころの記憶がほとんどないんですよ」

 横浜市港南区に住む私立大学1年生の細木新之助さん(18)=仮名=は、そう口にした。今でこそ笑い飛ばせるようになったが、幼少期はがんと闘い、その後は治療の影響がもとでいじめを受けた。「あまりにも嫌な思い出ばかりで、無意識に消したのかもしれません」と続けた。

 2歳のころだった。ある晩に腹痛と嘔吐(おうと)に襲われ、心配した両親が腹部をさすると、しこりがあった。地元の病院を回ったものの病名は特定できず、2日後に3カ所目の受診となった県立こども医療センター(同市南区)で肝芽腫(かんがしゅ)と診断された。肝臓に腫瘍ができる小児がんだ。即日入院し、腫瘍などを摘出した後は毎月、抗がん剤を投与した。

 国内では年間数十人しか発症しないという希少がん。母親のゆきさん(57)=同=は「治療が少し遅れていたら命が危なかったと、医師から言われた。小児科医でも診断したことがない人は多いと聞くけど、すぐに病名が分かったのは幸運だった」。1年間の入院治療を経て病状は落ち着いた。しかし、細木さん親子の前に立ちはだかったのは、無理解の壁だった。

 細木さんは抗がん剤治療の影響で幼少期から難聴を患い、言語の習得が遅れていた。地元の市立小学校では、クラスメートから「補聴器が臭い」とからかわれて外すようになり、会話が聞き取れず、またからかわれるという悪循環。上履きを隠されたり、筆箱に落書きをされたりすることが度々あり、価格約30万円の補聴器を隠され、見つからなかったこともある。嫌だという気持ちを上手に表現できず、いじめは卒業するまで続いた。

 学校側に相談したが、「やり返さないからいじめられる」と、突き放されたという。「親としては、保護と過保護の線引きが難しい。あまり学校に求めすぎてはいけないと悩みながらだったが、学校にはもっと親身になってほしかった」。ゆきさんは当時の対応に疑問を感じている。

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