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デジタル政界談話室(2)安保法制成立1カ月/納税者との約束

政治行政 神奈川新聞  2015年10月19日 23:39

 米海軍の横須賀基地に19日、新たに配備されたイージス艦「ベンフォールド」の艦名は、朝鮮戦争に出征したエドワード・クライド・ベンフォールド衛生兵から取られている。作戦中に傷病兵を救いながら21歳で戦死を遂げ、名誉勲章を贈られた。その名を冠した船が、北朝鮮の核・ミサイル開発をにらんで日本に入港してきたのも、歴史の巡り合わせだろうか。

 横須賀には最近、米軍が相次いで最新鋭の艦船を送り込んでいる。集団的自衛権の行使を容認した閣議決定や、日米防衛協力指針(ガイドライン)の改訂、安全保障関連法の成立といった動きに、歩調を合わせているようだ。

 ミサイル防衛を担当するフランク・ローズ米国務次官補が今春に来日した際、「戦力増強の計画は、日本の集団的自衛権の行使容認を前提にしたものなのか」と尋ねてみた。答えは、こうだった。

 「両国の防衛当局が緊密に協力できるようにするために日本がしている努力を支持する」
 ストレートな返答ではなかったが、一言ずつを区切っての明瞭な口ぶりだった。あらかじめ用意していた答えだったのは間違いない。

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 安保体制の変化を敏感に反映する性格が強い神奈川の在日米軍基地は、米軍がアジア太平洋地域に存在感を保つ上で重要な拠点でもある。

 訓練や作戦を終えて横須賀に戻ってきた船は、旧日本海軍工廠時代から技術を受け継ぐ日本人技師たちによって整備されている。横須賀の船や厚木の航空機の燃料が蓄えられているのは、横須賀や鶴見の貯油施設だ。

 そして、これらの機能は、日本国民の税金で維持されている。日本人技術者の賃金も、米軍家族住宅の水道光熱費も「思いやり予算」から出ている。

 米海軍第7艦隊の司令部は、横須賀に配備されている旗艦「ブルーリッジ」の中にある。以前に艦内の一角にある広報部隊のオフィスで軍人と話していたら、「あなたは日本のタックスペイヤーだろう?」と問われた。もちろん、とうなずくと、相手は続けた。

 「だったら、あなたたちはわれわれの作戦に対して大変な貢献をしているのだ。日本国民の協力がなければ、われわれは港から出ることもできないのだから」

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 19日は、安全保障関連法が成立して1カ月の節目でもある。

 公明党政調会長代理、上田勇氏(衆院6区)は、党内きっての外交・安全保障の論客だ。党外交安全保障調査会長を務め、集団的自衛権を限定容認する憲法解釈変更を議論した与党協議の席にもついていた。

 国会閉会後の今は手分けをして、地元の支持者との会合で関連法に関する説明を続けているという。「複雑な法制はなかなか一般人には分かりにくい。『集団的自衛権とは何か』というところから説明している」

 戦後最長の会期延長をした先の通常国会は安保一色に染まったが、それでも有権者の理解が深まってはいない。法案審議で安倍首相は「国民の平和な暮らしを守り抜くための抑止力」と繰り返したが、行使の例として挙げたホルムズ海峡での機雷掃海をめぐる答弁はぶれ続けた。

 政府や与党は「国民に丁寧に説明していく」と言い続けてきた。だが、それ以前の問題がある。神奈川や沖縄にある米軍や自衛隊がどのような任務や機能を帯び、基地に隣り合う地域にどのような影響を与え、その問題解消にどのような努力が払われているかさえ、国民に周知されているかどうかは疑問だ。

 「賛成議員は震えて待てよ」。安保関連法の成立後、与党議員を対象にした落選運動がネットを駆けめぐる。個人的には落選運動はあまり好きではない。だが少なくとも、変わりゆく安保の現状や展望の「丁寧な説明」を怠り、納税者との約束に背を向けるなら、それこそ次の選挙では覚悟を、と申し上げたい。実際にやっている議員らが県内にもいるのだから、全員に義務化してもよいぐらいではないか。(融)


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