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がん最前線 「若きエースの挑戦」(上)

社会 神奈川新聞  2015年10月11日 11:45


がん患者にサイバーナイフ治療について説明する野村さん =日本赤十字社医療センター
がん患者にサイバーナイフ治療について説明する野村さん =日本赤十字社医療センター

 若きエース-。脳神経外科専門医、野村竜太郎さん(39)はがん治療界でそう目される。

 先端医療機器、サイバーナイフの使い手である。米軍のミサイル追尾システムを応用し、呼吸で臓器が動いてもピンポイントで病巣に放射線を照射することができる。

 2010年に移った日本赤十字社医療センター(東京都渋谷区)で野村さんが積み重ねた症例は2千。同センターで行われたサイバーナイフ治療の半数に当たる。それも他の医療機関では処置が難しいとされた患者ばかりだ。

 転移性脳腫瘍の男性患者(72)もその一人。症状を説明する声が診察室に沈鬱(ちんうつ)に響く。

 「右手が握れず、鉛筆を持てないんです。右足はだるいというか、重いというか…」

 磁気共鳴画像装置(MRI)画像には左前頭葉に約2センチの影が映り込んでいた。腫瘍が見つかったのは1カ月前。地元の病院で内視鏡による胃がんの除去手術を2回受けたが、脳と肺への転移を避けることはできなかった。

 野村さんは明るい調子で口を開いた。

 「サイバーナイフという先端治療を知らずにいる患者さんもたくさんいる。通われていた病院からはこれまでも紹介を受けていて、つながりがあったんです。ラッキーだったのかもしれませんよ」

 サイバーナイフの治療法を説明し、1回約30分、3日間の照射プランを提案すると、男性は即答した。「散々つらい手術を受けてきたのでもう怖いものはありません。すぐにでも受けさせてください」

 絶望の暗がりに希望の光を差し込むことから治療は始まる。がん治療のフロントランナーは患者の心までを診る。1週間後の治療開始がその場で決まり、退室する男性の背中を見送った野村さんはつぶやいた。

 「患者を紹介するという、医師同士の連携が大事なんです」

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