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空母交代2015〈1〉「反対意見出にくい」 トモダチ・レーガン

社会 神奈川新聞  2015年09月28日 10:21

横須賀に交代で配備されるRレーガンに、GWから積荷を載せ替える乗組員=8月、米サンディエゴ(米海軍提供)
横須賀に交代で配備されるRレーガンに、GWから積荷を載せ替える乗組員=8月、米サンディエゴ(米海軍提供)

 原子力空母ジョージ・ワシントン(GW)の後継艦として配備されるロナルド・レーガンが10月2日、米海軍横須賀基地(横須賀市)に入港する。米国のアジア太平洋重視戦略に基づく、最新鋭の原子力空母の事実上の母港化は何を意味するのか。日本を取り巻く安全保障環境の変容に伴い、米海軍と海上自衛隊の拠点として存在感を増す横須賀の戦略的価値は市民生活にどう影響するのか。「基地の街」は変化の時を迎えている。

 8月31日。米海軍からRレーガンの入港日に関する連絡を受けた外務省は、空母のプレゼンス(存在)が引き続き維持されることは日本の安全、平和に寄与する、とコメントを出した。そして、こうも付け加えた。「ロナルド・レーガンは東日本大震災の際の米軍による支援活動(トモダチ作戦)に従事した艦船であることにも留意し、今回の入港を歓迎する」

 第40代大統領ロナルド・レーガンにちなんで命名された同空母が日本人に身近になったきっかけが、トモダチ作戦だった。

 2011年3月、同空母を中心とする艦隊は訓練参加のため韓国に向かっていた予定を変更し、被災地の東北沖に急派。震災発生からわずか2日後にヘリコプターで捜索活動や支援物資の輸送を始めた。在日米軍も物資を運んだり、復旧作業に従事したりした。最多で約1万6千人が参加、日米の絆の強さを印象づけた。

 一方、原子力空母として初めて日本に配備され、08年9月から横須賀を事実上の母港としてきたジョージ・ワシントン(GW)は約25年ごとに必要とされる燃料交換の時期を迎えていた。空母の交代は近かった。GWからどの艦船に引き継ぐか。日米両政府にとって重大な懸案だった。


 交代に向けた水面下の交渉は12年ごろから動きだしたという。在日米海軍関係者と太いパイプを持ち、GW配備時にも日米の橋渡し役を担ったと自負する地元政財界の重鎮が、米海軍幹部との会談を振り返る。「(後継艦について)意見を求められたので『トモダチ作戦で一緒に命を懸けたRレーガン以外にないよ』とアドバイスした。相手は『はい』と答えただけで何の反論もなかった。最初から『Rレーガンでないと駄目だ』というシナリオはできていた」。会談の席で他の空母が選択肢に挙がることはなかったという。

 交代に伴い、米側が神経をとがらせていたのはGW配備前に巻き起こったような反対活動のうねりだ。それだけに被災地支援で「日米共同」をあらためて具現化したRレーガンの存在は大きかった。

 ただし、懸念もある。米国内では帰還した空母乗組員らが被災地で被ばくし、健康被害を受けたとして東京電力などを相手に損害賠償を求める集団訴訟を起こしている。いまだ係争中で、この問題に対する米軍関係者の口は重い。


 9月13日。市内であった空母の母港化反対集会で呉東正彦弁護士は訴えた。「放射能で汚染され、現地で訴訟も起きている原子力空母を横須賀に来させようとしている。こうした説明が市民に全くなされていない」。これまで原子力空母そのものの危険性や日米両政府の説明不足といった問題を指摘してきた。しかし、GW配備時のような全市的な議論の盛り上がりに欠けたままだ。

 その要因は地元・横須賀市の対応からもうかがえる。吉田雄人市長は「同型艦だから」と、GW時とは違い、安全対策など市主催の住民説明会を一度も開いてこなかった。

 基地が維持されることで横須賀の経済は成り立ち、日米安保も保たれている、との持論を持つ重鎮の男性は現状を端的に表現した。「船が船だけに反対の意見も出にくかったと思う。『お役に立ちます』と言って来るのではない。『お役に立って来ました』なのだから」


戦力増強が進む米海軍横須賀基地
戦力増強が進む米海軍横須賀基地

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