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「心の荷」下ろして 連載・復興の道しるべ(4)

社会 神奈川新聞  2015年09月12日 11:22

心の荷下ろしの一環で行われたほうとう作り。役割を分担し、打ち解けるきっかけになった =2月14日、御殿場市
心の荷下ろしの一環で行われたほうとう作り。役割を分担し、打ち解けるきっかけになった =2月14日、御殿場市

 ホワイトボードに約束事が五つ書き出された。

 〈この場で話したことの秘密を守る〉
 〈他の人の感情を批判しない〉
 〈話への参加、発言を強制しない〉
 〈発言や行為に対して心理的解釈をしない〉
 〈人の発言の邪魔をしない〉

 誰かを評価したり、反省を促したりはしない。抱えていた悩みやため込んでいた気持ちを吐き出し、日常から自由になる。それがたやすくはないと分かっているからこそ、この場に足を運んでいた。

 静岡県御殿場市の国際青少年センター東山荘。澄み切った冷気が、間近にそびえる富士の威容を一層大きく感じさせた2月半ば、10人ほどの男女が車座になっていた。

 トラウマ(心的外傷)ケアが専門の帝京平成大名誉教授、中谷三保子(74)=逗子市=が穏やかな口調で語り掛ける。「皆さんはこれまで3年、4年といろんな形で東北を支えてきた。人に出会い、ちょっと傷ついたり、うまくいかなかったりしながら。振り返りつつ、自分を立て直していきましょう」

 集っていたのは、東日本大震災の被災地で傷ついた人々や古里を支え、あるいは復興を少しでも前に進めようと、支援に奔走する人たちだった。

 目をつぶっての呼吸法で体の力を抜いてから始まった「心の荷下ろし」。吐露される思いは、担い手ゆえの苦しみに満ちていた。

 支援団体内の人間関係のトラブル、仲間たちの心の病。あるいは、なぜ支援に関わり続けているのかという自分の立ち位置に対する疑問。遺族でもありながら支援に奔走する人は、迫る4年の節目を前に波立つ胸の内を抑えられずに参加したと明かし、一方で4年の歳月を重ねてようやく、こうした場に顔を出す気持ちのゆとりが出てきたという人もいた。

 東山荘を運営する日本YMCA同盟と日本NPOセンターの協働事業として、2014年2月に始まった「支援者のためのリフレッシュプログラム」。被災地から離れた場所での2泊3日を、胸の内を吐き出す「荷下ろし」や野外体験、自由な時間に費やし、自分自身とこれまでの日々を整理する。これまでに催された5回で50人がこの支援者ケアを受け、自分に向き合ってきた。

 時に涙し、とめどなく話し続けてしまう荷下ろしは、言葉での表現がすべてではない。

 グループに分かれ、気に入った雑誌の写真や図柄を切り貼りするコラージュ作りもその一つ。さらに、2人一組で手をつなぎ、タオルで目隠しした相手を言葉を使わずに広場へ誘導し、自然を肌で感じながら、芝生に寝転んで静かに目を閉じる。昼食の野外調理では、たき火を囲んでほうとう作りに取り組んだ。

 1995年の阪神大震災で支援活動に明け暮れた日本YMCA同盟の法人事務局長、大江浩(58)=横浜市戸塚区=は「燃え尽きて現場を去っていく仲間を間近で見てきた」経験を踏まえ、呼び掛けた。

 「支援者も被災者であることが多く、思いが通じないと無力感にさいなまれてしまう。傷ついた人に寄り添う人もまた傷つき、孤立感を深めている。悲しみや苦しみは心の中に堆積し、何かのきっかけであふれる。その前に気付き、休み、気分転換を」。さまざまな形で復興に関わる人々を一歩引いたところから支える理由は、ここにある。=敬称略


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