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時代の正体〈179〉無力感と悔恨の終戦 詩人・平林敏彦さん

時代の正体 神奈川新聞  2015年08月30日 10:25


「敗戦で『いかに死ぬか』から『いかに生きるか』に変わった」と話す平林敏彦さん=横浜市西区
「敗戦で『いかに死ぬか』から『いかに生きるか』に変わった」と話す平林敏彦さん=横浜市西区

 若き詩人は、軍隊で終戦を迎えたとき「これでまた詩が書ける」という安堵(あんど)と、裏腹に、重苦しい後ろめたさをも感じた。なぜ戦争の不条理に抵抗できなかったのか、と-。今夏91歳になった横浜生まれの詩人、平林敏彦さんにとって戦後とは、自らの戦争体験を内省し深化させ、全く新たな文学の形を創造していく闘いの場だった。

 「復員するとき、軍服の襟に付いていた階級章の二つの星を引きちぎって、くずかごにたたき込んだのを覚えています」。茨城・鹿島灘の海岸で終戦を知ってから数日後、とがめる者はもういなかった。「戦争という現実が理不尽に奪い去ろうとした詩の火種が、まだ燃え残っていることにぼくは気づいた」。自伝を交えた評論「戦中戦後 詩的時代の証言 1935-1955」(2009年)に平林さんはそう記した。

 1937年の日中開戦から41年の日米開戦に至る過程で、文学も国家総動員体制の一翼を担った。大政翼賛会文化部による同年の詩集「詩歌翼賛」には高村光太郎、島崎藤村、室生犀星、北原白秋ら名だたる詩人が名を連ね、戦意とナショナリズムを扇動した。戦後の詩は当然、そこに戻れなかった。近代の叙情詩の蓄積を吸収しながらも決別し、全く新しい詩を創造する必要があった。

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