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「3段階」どう実践
箱根山噴火想定の新計画 渋滞、高齢者避難に課題

社会 神奈川新聞  2015年08月27日 09:21

 箱根山(箱根町)の噴火を想定した新たな避難計画は、住民や観光客が場所や状況に応じて避難を重ねる「3段階避難」という考え方を打ち出した。原則とされた車での移動は渋滞を招き、避難の妨げとなる恐れもある。誘導や運転を担う宿泊施設や自治会などの役割が鍵を握りそうだ。 


 「噴火を想定した避難計画は既に地域独自で定めてある。その内容を掘り下げて見直せば、9月中にも新たな対応策をまとめられるのではないか」

 箱根登山鉄道とケーブルカーの接続駅で、水蒸気噴火時の避難対象エリアに一部が含まれる強羅地区。箱根強羅観光協会の田村洋一専務理事は新たな計画を冷静に受け止めつつ、今後の対応を見据える。

 新計画では、突発的な噴火が発生した場合、1次避難として住民らに鉄筋コンクリート造の建物に逃げ込むことを求めた。その後、2次避難として、噴石の及ばない半径2・1キロ圏外の公共施設にマイカーなどに分乗して集合する。

 強羅では、宮城野浄水センター(同町木賀)が2次避難場所。周辺を含め400台程度駐車できるが、アクセス道は限られ、渋滞の懸念がある。県は「自力避難が困難なお年寄りや車を所有していない人も含め、どう乗り合って避難するか。自治会のマニュアルには、かなり細かい内容を定めてもらう必要がある」と課題も口にする。

 2次避難場所から、町がチャーターしたバスなどで湯本の避難所か近隣市町の避難所へ向かうのが住民にとっての3次避難で、ここでようやく避難行動が終了する。避難所に直接向かう手順としなかったのは、2次避難場所で安否確認を行い、避難対象地域に残っている人の数を把握して救助や捜索に役立てるためだ。

 だが、2・1キロ圏内の避難対象者は最大で1万5千人に上るだけに、町関係者も3段階の避難が「どれぐらいで終わるかは分からない」と手探りの現状を明かす。

 交通事業者の役割も重要だ。警戒レベル4以上で避難対象地域に一部が入る駒ケ岳ロープウェーを運行する伊豆箱根鉄道は「初日の出のときは山頂に千人ぐらい集まる。駅舎以外にしっかりとした建物がないので、今後対応を検討したい」とした。

落ち着く火山活動 地震減少 膨張収まる

 ごく小規模な噴火に伴い箱根山(箱根町)の噴火警戒レベルが3(入山規制)に引き上げられてから30日で2カ月となるが、火山活動は徐々に落ち着いてきている。26日に開かれた箱根火山防災協議会でも、火山性地震が減少し、山体の膨張を示す地殻変動も収まりつつあることが報告された。

 県温泉地学研究所によると、4月26日に始まった今回の火山活動でこれまでに観測された地震の回数は1万回を超えているが、8月に入ってからは1日10回程度で推移している。竹中潤研究課長は「引き続き注意は必要だが、かなり少ない状況」と説明した。

 また、人工衛星の観測データから大涌谷火口周辺の局所的な隆起を分析していた国土地理院も「7月中旬以降は数値に表れるような地殻変動は見られない」との見解を示した。

 気象庁は「現時点ではレベル3の状況と評価している」としつつも、衛星利用測位システム(GPS)が捕捉した山体の膨張が落ち着きを見せ始めていることを指摘。レベルの引き下げを「なるべく早く判断したい」と述べた。

 こうした状況を踏まえ、箱根町の山口昇士町長は協議会終了後、「静穏な状態が続いており、早い段階で警戒レベルを2にしていただければ」と期待感を示した。

宿泊予約件数 前年比4割減 箱根町が産業影響調査

 箱根町は26日、箱根山・大涌谷周辺の火山活動活発化による町内産業への影響調査結果を公表した。噴火警戒レベル3(入山規制)で迎えた7月の旅館・ホテルなど宿泊業の実績は前年比64・7%と減少。9月分の旅館・ホテルの宿泊予約件数も40%以上減るなど、厳しい状況が続いていることをうかがわせた。

 7月実績の前年比は宿泊業のほか、飲食業が58・9%、土産物など物産業が55・9%、観光施設業が57・4%、電車・バスなど交通業が65・0%と、大幅にダウンしていた。町は「飲食、物産業などは6月と比べ小幅なダウンで、警戒レベル引き上げの影響はなかった」と冷静に受け止める。

 しかし「交通業は毎月大幅に落ち続けている。どこまで下がるのか」と不安を隠せない様子だった。

 調査は宿泊(57施設)、飲食(35施設)、物産(25施設)、観光施設(7施設)、交通(2社)を対象に今月実施された。


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