
東日本大震災から5度目のお盆を迎える。故郷の復興に向き合う若者たちの思いを見詰める。
にぎやかで懐かしくも、哀(かな)しい夏祭りだった。
7日、岩手県陸前高田市気仙町。更地になった町に900年以上続く「けんか七夕」が喧噪(けんそう)を運んでいた。
勇壮な掛け声とともに山車をぶつけ合うたび、歓声が上がる。大津波にのまれた町は人、家、店と、すべてが流された。残された人々も散り散りになった。文字通り年に1度、ふるさとの祭りで顔を合わせるのが楽しみになっていた。
それもこの夏が最後になる。会場の今泉地区は土地のかさ上げが予定され、来年以降、少なくとも同じ場所で祭りを続けることはできなくなる。
追憶だけで人は生きられない-。
それが現実というものなのだろうか。永田園佳さん(24)は考え込む。「本当にけんかをするほどみんなが熱くなる祭りのときだけは、今泉の町はまだ残っていると感じられたのだけれど」
レプリカとなって残された「奇跡の一本松」が遠くにかすんでいた。