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盲導犬連れて落語 自然体の自分を表現

カルチャー 神奈川新聞  2015年08月07日 03:00

盲導犬を連れて創作落語を披露する石田さん(神奈川障害者職業能力開発校提供)
盲導犬を連れて創作落語を披露する石田さん(神奈川障害者職業能力開発校提供)

 盲導犬を連れて高座に上がり、落語を披露する女性が大和市にいる。神奈川障害者職業能力開発校(相模原市南区)の訓練生・石田奈央子さん(41)は普段は自宅で噺(はなし)をさらい、視覚障害者では難しい細かいしぐさなどは所属する落語クラブのけいこで教えてもらっている。高座では視覚障害者と盲導犬が登場する創作落語を持ちネタに、自然体の自分を出す。「障害者だってお酒を飲むし、悪口も言う。弱い、けなげというイメージを良い意味で裏切りたい」

 初舞台は、突然訪れた。昨年6月、ある研修の合宿で、自分の得意なことを生かした余興を披露するように言われた。

 もともと落語好きだった石井さん。思いついたのが、盲導犬と飼い主が会話をする創作落語だ。当時、9年連れ添ったメスの盲導犬が“卒業”を迎えようとしていた。

 「お前は、これから普通のおばさんになるんだな」

 傍らの盲導犬に話しかけ、「普通のおばさんは、電車に乗ると急いで座席を取るんだぞ」「綾小路きみまろのDVDを持っているんだぞ」など「おばさん」の特徴を挙げて会場の笑いを誘った。

 このとき噺を聴く楽しみとともに、演じる魅力にはまった。

 今年4月に地元の落語クラブに入会。5月には、アマチュア落語家デビューを果たした。

 落語に感じるのは、「許しの文化」。「ばかな人、変な人、どんな存在も、またどんな内容の話でも落語という器は全部受け入れる」

 2作目となった創作落語は、長屋に引っ越して来た盲導犬と大家との会話で進行する。その中に、「デパートやレストランに入れる」といった盲導犬についての知識のほか、「店員から外に出ろと言われることがある」というシリアスな悩みなども、笑いとともに織り交ぜた。

 ただ、障害者として使命があるとは思っていない。「あそこに変な人がいる、と思ってもらえればいい」と石田さんは笑う。「それだけで十分、『かわいそう』『けなげな努力家』というイメージを裏切っているから」

 今後は、古典落語にも挑戦したり、プロの落語家と組んだりして、研さんを積むつもりだ。


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