1. ホーム
  2. 社会
  3. 「安保法案は拙速」 イラク戦争の検証訴える 高遠さん、横須賀で講演

「安保法案は拙速」 イラク戦争の検証訴える 高遠さん、横須賀で講演

社会 神奈川新聞  2015年08月05日 03:00

「イラク戦争の検証なくして、安保法案は語れない」と話す高遠さん=7月31日、横須賀ベイサイドポケット
「イラク戦争の検証なくして、安保法案は語れない」と話す高遠さん=7月31日、横須賀ベイサイドポケット

 審議の舞台を参議院に移した安全保障関連法案。イラクで10年以上にわたり人道支援に携わる高遠菜穂子さん(45)は自身の経験から、法案の危うさを訴える。「イラク戦争の検証なくして、安保法案は語れない」と。

 高遠さんは7月31日、横須賀ベイサイドポケット(横須賀市本町)で開かれた講演会「イラクで見つけた憲法九条」(主催・横須賀市民9条の会)で、体験を語った。

 2004年4月、イラク中部の都市・ファルージャ近郊で医療支援活動などを続けていた高遠さんを含む日本人3人が、地元の武装勢力に拘束された。9日後に解放されたが、ある兵士の一言が脳裏に焼き付いた。「お前らは自衛隊のスパイだろ」

 03年3月、米国や英国、豪州などの有志連合はイラクの武装解除と国家再建を目的に侵攻、イラク戦争が始まった。日本はテロ特措法を成立させ、人道復興支援や後方支援などで自衛隊を派遣。活動を「非戦闘地域」に限定したが、憲法9条との整合性などを含め大きな論争になった。

 自衛隊の派遣を背景に、身の危険を味わった高遠さんは「いまの対テロ戦争の原型はイラク戦争にあって、ずっと続いている。それを知らずして、安保法制は語れない」と訴える。

 フセイン政権の崩壊後、新政府は06年にイスラム教シーア派を中心に樹立。その後、国内向けの反テロ法を盾に、新政府に対しデモ活動を続けるスンニ派の人々を不当に逮捕するなど虐待や殺害を繰り返した。

 13年12月、対テロ事件の激化により政府軍はスンニ派に大規模攻撃を行った。空爆で多くの子どもたちが犠牲となり、高遠さんがいたファルージャ総合病院は搬送された死傷者で血の海と化した。住民は「政府は国民に向かって発砲している。米国がもたらした民主主義とはこういうものか」と叫んだ。

 いまもイラク情勢は混迷を続けている。昨年6月、過激派組織「イスラム国」がイラク北部のモスルを占拠。政府から迫害を受けた多くの避難民が戦闘員として加わったことが、勢力増大に関与しているという。

 犠牲と憎悪が織り成す「負の連鎖」。その現実を間近に見てきた高遠さんは警告する。「『国境なき戦争』ともいわれるが、対テロ戦争と言って空爆すると、アジアでもヨーロッパでも、どこでも報復行為が起きる。日本政府は安保法案という顔の見える支援を安倍首相流にやろうとしているが、あまりにも拙速。恐ろしい未来が待っている」


シェアする