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人口減時代(6) 消える学びや 揺れる思い

社会 神奈川新聞  2012年09月30日 16:54

三保中学校のグラウンドで開かれた全校17人のソフトボール大会=2012年7月、山北町
三保中学校のグラウンドで開かれた全校17人のソフトボール大会=2012年7月、山北町

 少子化に直面する地域にとって、学校の存廃は避けられない課題だ。次世代を育て、地域交流の核にもなる拠点は、人口減社会ではどう議論されているのか。県西部と三浦半島の教育現場から報告する。

 丹沢湖畔にある山北町立三保中学校のグラウンドに7月、歓声が響いた。

 全校生徒17人のソフトボール大会。教職員も加わったチームで白球を追う。打席に立つ下級生に、上級生は軽めの球で思いやる。

 「みんなが家族みたいな感じ」。生徒の愛着も深い中学校は2年後、67年の歴史に幕を閉じる。生徒数の減少を受けた中学校の統廃合計画で、中心部にある山北中学校に統合されるためだ。

静岡県境に近い清水中学校も同時に統合される。横浜市、相模原市に次いで県内市町村3位の面積を持つ山北町内では今後、中学校は1校だけとなる。

 三保、清水中に在学中の生徒や進学予定の小学生にとって、本年度から統合までの2年間は移行期間。入学時や進級時に地元に残るか、統合に先立って山北中に進むかを選ぶ。

統廃合、分かれる進路 



 三保地区では4月に中学生になった8人のうち、3人が山北中へ進学。清水地区では公立へ進む7人全員が山北中を選んだため、清水中の1年生はゼロになった。

三保地区から山北中へは片道、バスで約1時間かかる。「一緒に育ってきた友達と離していいのか迷った」。1年生の保護者の一人は振り返る。

 地元では幼稚園から中学校まで運動会は合同。地域で子どもを育てている実感が住人にある。だが少人数では「教育環境が不十分で、生徒も幅広い人間関係を築けない」(町教育委員会)。一昨年秋に統廃合の方針が示されてから、保護者たちは悩んできた。

 「新たな出会いは発見の機会」「三保で育つことを一年でも長く経験させたかった」-。選択を分けた親たちも、地域には共通の憂いを抱く。「行事は年々、小規模になっている。統合から10年、20年後にどうなるのか不安だ」

 山北では、町内の3小学校の統廃合も議論の俎上(そじょう)に上っている。

 ■ ■

 学校の存廃が地域の大きな問題となっているのは、山北だけにとどまらない。

 8月下旬、横須賀市の市立平作小学校の体育館。PTAが主催する夏休み恒例の工作教室に、例年の倍となる100人の親子連れが集まった。徒歩で10分もかからない距離にある市立池上小学校の子どもたちが、今回初めて招かれた。

 平作小は来春、池上小に統合されることが決まっている。市教育委員会が2007年に小規模の小中学校について定めた方針に基づき、統廃合が決まった学校の一つだ。


2013来春に統合する小学校2校の児童と保護者が参加した工作教室=2012年8月、横須賀市立平作小学校
2013来春に統合する小学校2校の児童と保護者が参加した工作教室=2012年8月、横須賀市立平作小学校

 2校は1年以上をかけ、合同学習やテニス教室などを通じて事前交流を重ねてきた。「スムーズな統合の下地になれば」。阿部優子・平作小校長は期待する。

 平作小の児童数は146人で、全学年が1学級。もともとは、街の成長を背景に児童の増えていた池上小から分かれて開校した歴史を持つ。増え続けていた市内人口が反転したことで、再統合する形になる。

 PTA会長の比護友一さん(41)は、構想が浮上した時期を「防災や防犯の拠点がなくなることへの不安が広がった」と振り返る。ただ今では、統合が交友の幅を広げてくれることへの期待のほうが、子どもたちには強い。5年生の田中隆豊君(10)は「ここで卒業できないさみしさもあるけれど、新しい友達をつくるのが楽しみ」。

 箱根町でも、08年度に小中学校の統廃合を実施。「5小3中」は「3小1中」となった。「3小1中」は保護者や地域、学識経験者らが参加する協議会の提言だったが、町からは一時「2小1中」案が示されたため、保護者の反発を招いて「3小1中」に落ち着くなど、曲折を経た。

 統合された小学校でPTAにかかわった男性(49)は、5年生と3年生だった娘と息子に「早いうちに多人数に慣れてほしい」との思いがある。小さな中学校を卒業した生徒が、高校からの多人数教育になじめずに中退する例を、過去に見聞きしてきたためだ。「統合後も細かいケアのできる学校であってほしい」

住民の思い入れ、難航する統廃合


 「ほかにお話のある先生はいませんか」

 毎週月曜の朝、横須賀市立汐入小学校(同市汐入町)の体育館で開かれる朝礼では、2人組の児童が司会を務める決まりだ。


横須賀市立汐入小学校の朝礼に集まる全校児童。小さい体育館にも収まる
横須賀市立汐入小学校の朝礼に集まる全校児童。小さい体育館にも収まる

 全校児童数は98人。4月に6年生から始まる司会の輪番も、秋には1年生に達するから、また高学年に戻る。「一人一人に自分の出番を用意できる」。本間健一校長が、少人数教育の意義を説明する。

 市内で唯一、全校児童数が100人を下回る小学校は、今年で創立140周年を迎えた市内最古の学校の一つでもある。1872年の明治政府による学制頒布と同時に生まれた学校が起源だ。

 戦前には旧海軍関係者の子どもを集めて児童数が2千人を超えた時期もあった。だが戦後には減り続ける一方。児童の交友関係を広げるため、学校は「卒業生が同じ中学校に進む近隣小学校との交流を深める」(本間校長)ことを検討している。

 規模が小さくなりながらも、長い歴史を刻み続ける学校への思い入れは、地元の住人にも強い。

 汐入小のある地域も、市教委が設けた適正配置の検討対象となっていた。だが学校統廃合を含めた方向性の議論をめぐって、市教委、学校と卒業生や地域住民との間の協議で結論が出せず、昨年に「時間をかけて検討を進める」として当面、現状維持にする方針が決まっている。

(2012/9/30)


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