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人口減時代(4)別荘地に新顔、つながり細いまま

社会 神奈川新聞  2012年06月01日 23:19

利用者が共有するごみ捨て場の清掃は、春山荘組の仕事。1回で2時間ほどかかることもあるという=箱根町仙石原の箱根春山荘
利用者が共有するごみ捨て場の清掃は、春山荘組の仕事。1回で2時間ほどかかることもあるという=箱根町仙石原の箱根春山荘

 箱根・仙石原を貫く国道から折れた脇道の先に、高級別荘地「箱根春山荘」が広がる。標高600メートルを超す地に、昭和初期に開発された避暑地だ。200区画が設けられ、瀟洒(しょうしゃ)な家が整然と立ち並ぶ。

 土地・建物の所有者でつくる管理団体によると、現在の建物は約110軒。2005年から10軒ほど増えた。今も数カ所で新築工事が進む。箱根とは別に生活拠点を持ち、週末にだけ訪れる所有者が9割を占めており、住民登録をした定住者はまだ多くない。

 ただ近年になって、長期間にわたって滞在する「半定住者」が目立ち始めた。自宅と箱根で交互に時間を過ごしてきた人が、退職を機に箱根へ軸足を移す例が多くなったためだ。

□ ■ 

 ピークの1960年代に2万人を超えた箱根町の人口は、今では1万3494人(5月現在)となった。

 世帯数の減少傾向は地域ごとに濃淡が見られる。この10年間で、温泉街の湯本は15%ほど減ったが、別荘地を抱える仙石原ではほぼ変化はない。春山荘のように微増している所もある。

 ただ、それが地域共同体の力に直結するかどうかは別の問題だ。

 別荘のオーナーの男性(75)は都内在住。最近は数カ月間を箱根で過ごすこともあるという。楽しみは近所の散歩だ。「煩わしさから解放されて静かに暮らせる」。隣人の顔は知らない。

 住民票が移されていなければ、行政も居住実態を把握しづらい。町担当者も「安全面や防犯の観点からも自治会加入は望ましい」と強調する。それでも、都会のライフスタイルを持ち込む半定住者の中には、地域活動から距離を置きたがる傾向が見え隠れする。

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 春山荘の別荘地に暮らす人々は、自治組織「春山荘組」を構成する。利用者共有のごみ捨て場を持ち回りで清掃するのも仕事。だが高齢で参加できない人も多く、10人に満たない中核メンバーに負担が集中している。

 組長を務める越智尊彦さん(64)は、大手自動車メーカーのOB。現役時代には17回もの転勤を経験して、地域のつながりの大切さを実感した。07年に箱根へ転入。すぐに春山荘組に加盟した。

 今の組員は約20軒で微増傾向だが、中核メンバーの数は10年以上も横ばいが続いている。新しい顔触れに対する勧誘に力を注ぐが、効果は思わしくない。

 「よく顔を見掛ける人はいるが、家に表札も出ていないので名前すら分からない。人が増えても、地域活動が活発化するかどうかは結局、個人の意思次第だ」

(2012/6/1)


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