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人口減時代(3) 空き家に新風 若年層

社会 神奈川新聞  2012年05月31日 23:15

学生向け賃貸住宅に改築予定の空き家を見学する内田さん(左)=4月、横須賀市内
学生向け賃貸住宅に改築予定の空き家を見学する内田さん(左)=4月、横須賀市内

 150段近い石段を上って路地を奥に入ると、築45年の木造の平屋が見えてくる。

 県立保健福祉大(横須賀市)の2年生、内田匡紀さん(19)が、市の職員やリフォーム事業者とともに室内を見回した。

 「2人なら十分の広さだけれど、冬はすきま風が入って寒そうなのが心配。窓はしっかり閉まるようにしてほしい」

 横須賀市が本年度から谷戸で始めた空き家への若年層誘導策の一環だ。空き家を改築する費用の一部をオーナー向けに市が助成して、学生向けの賃貸共同住宅に変える。

 所有者の女性(70)は今は葉山町に住む。この家は10年前から空き家の状態だった。雑草を刈りに年4回ほど来る程度という。

 「このまま、誰も住まない状態で残ると思っていた。学生さんに住んでもらえるのは本当にうれしい」

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 社会福祉学を学ぶ内田さんは今、藤沢の自宅から1時間半かけて大学へ通う。経済的な余裕はなく、一人暮らしを諦めていた。

 古いシェアハウスの家賃は安い。入居は今秋の予定だ。

 谷戸での生活を控えた今は「修学旅行前のわくわく感に似ている」と感じている。「在学中はずっと暮らしたいと思う。不便な面もあるかもしれないが、貴重な経験になる」

 同じ谷戸に暮らすことになる高齢者にとっては、日常の買い物やゴミ出しも楽ではない。生活面での手伝いを条件に、学生が負う家賃の一部を補う仕組みも、市の事業に組み込まれている。

 内田さんとはサークル仲間の奥津光佳さん(19)がルームメートになる予定だ。「普段関わる機会が少ない地域のお年寄りに接して、支援していけたらと思う」

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横須賀市内の谷戸。石段の途中に、休息用のベンチを住民が置いた
横須賀市内の谷戸。石段の途中に、休息用のベンチを住民が置いた

 だが、こうした主体性を持って生活の場に選ぶ人を除けば、新住人を招ける競争力が谷戸地域に高まったわけではない。

 地元の不動産会社は、定期的に開く住み替え相談の場で「山から降りたい」という相談を、高齢者から繰り返し受けてきた。

 買い手や借り手がつかずに家の処分ができなければ、住人も不便な土地から動けない。勤労世代の人口減少が目立つ横須賀市では「若年層向けの住宅供給は便利な立地のものも含めて、全体的に足りている」(会社幹部)のが実情だ。

 短期間で転居しがちな若年層を継続的に呼び込み、谷戸に新風を吹き込むことができるか。挑戦の結果が見えるのは、しばらく先になる。

(2012/5/31)


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