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中学教科書採択“本番”へ 育鵬社の歴史・公民が焦点

社会 神奈川新聞  2015年07月20日 03:00

 公立中学校で来春から使われる教科書の採択が22日から県内各自治体の教育委員会で始まる。愛国心の育成や日本の歴史を肯定的に捉えることに主眼を置く育鵬社の歴史・公民教科書が採択されるかどうかが焦点。安倍晋三首相に近いグループが「日本がもっと好きになる教科書だ」と評する一方、反対する市民団体などは「戦争を美化している」と批判する。採択をめぐる“熱い夏”が本番を迎える。

 育鵬社の教科書は太平洋戦争について「日本軍の勝利に東南アジアやインドの人々は独立への希望を強くいだきました」と記述、集団的自衛権行使や憲法改正の制度を手厚く紹介している。教科書採択は原則4年に1度行われ、前回2011年は横浜、藤沢市などで育鵬社の歴史・公民教科書が採択された。

 18日に横浜市内で開かれたパネルディスカッションでは「日本がもっと好きになる教科書を」というスローガンを掲げて育鵬社の教科書採択を求める団体「日本教育再生機構」理事長の八木秀次麗澤大教授が登壇した。

 安倍首相のブレーンとされる八木教授は「日本のことを悪く書き、どこの国の教科書か分からない教科書がある」と指摘。「私が執筆したこの教科書には、日本の神話が紹介されている。神話、伝承を知らずして、日本の未来を学ぶことはできない」と育鵬社の教科書を手に力説した。

 一方、採択に反対する市民団体も活発に活動する。市民団体「横浜教科書採択連絡会」は「憲法を軽視し、過去の戦争を肯定する教科書を使わせない」として約5万人分の署名を横浜市教委に届けた。

 同市内在住の有識者413人も意見書を提出。呼び掛け人の小林節慶応大名誉教授は「戦争を美化する育鵬社の教科書を使うと、戦争は良いことだと考える好戦的な子どもが育つ」と批判する。

 各自治体では採択に先立ち、PTA代表や教育関係者らが採択すべき教科書について議論する採択検討委員会(審議会)が開かれている。10日に開かれた座間市の検討委員会では、調査員を務める教員が各教科書の特徴を報告。育鵬社の歴史教科書について「扉写真に日本の美が表現され、歴史への関心を高める」「女性の歴史に興味を持たせる内容」と報告があった。委員から育鵬社の教科書について個別の言及はなかった。

 採択は検討委員会の報告などを参考に、各首長に任命された教育委員(教育長を含む)が行う。県内には地区ごとに同一の教科書を選ぶ「教科用図書採択地区」が28ある。複数の市町村が共同で採択を行うのは「足柄上」(南足柄市、中井、大井、松田、山北、開成町)、「足柄下」(箱根、真鶴、湯河原町)、「愛甲」(愛川町、清川村)の3地区で、川崎市は全国で唯一、複数の採択地区(4地区)がある。


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