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人口減時代(1)横須賀 谷戸に朽ちる空き家

社会 神奈川新聞  2012年05月29日 23:03

横須賀の谷戸に立つ空き家。解体も一苦労=4月、横須賀市汐入町
横須賀の谷戸に立つ空き家。解体も一苦労=4月、横須賀市汐入町

 米軍と海上自衛隊の横須賀基地を見下ろす山肌に、木造の古い家が立つ。急な石段が玄関につながる。以前は高齢の夫婦が住んでいたが、その後は何十年も、家のあるじはいない。

 鉄柵は崖下に傾いたまま。基礎にはひび割れが走る。足元の山裾を線路と国道のトンネルが貫く。

 「やっぱり人間が住んでいないと、家は傷むのが早いねえ」

 横須賀市の汐入連合町内会長、横垣勝彦さん(67)が汗を拭う。知人の家主から頼まれ、手作業で空き家の解体を始めたのが今春。「梁(はり)を下ろすのが大変だった」。朽ちた床板をはがすと、タヌキの親子がすみついていた。

 ■ ■ 

 山がちな三浦半島の付け根に当たる横須賀には、丘陵を細長く切り込む「谷戸(やと)」と呼ばれる地形が多い。坂にひしめく家々の間を狭い路地と石段が分け入る。自動車では入れない街区もある。

 汐入の谷戸はかつて、軍事施設や造船所に職を得た地方出身者が居を構えた土地でもあった。住人同士の結び付きと自主性は今も強い。空き家の周囲に雑草が伸びていれば、横垣さんは自ら草刈りをする。「昔は家だって自分たちで材料を運び上げて建てたんだから」

 だが時代が移り、至便さに欠ける立地が、次第に敬遠されていく。成長した子どもが去り、坂の上り下りがきつくなった高齢者が平地に住み替える動きも重なって、住人の減少に歯止めがかからない。

 横須賀市の人口は41万5千人(5月現在)。谷戸地域の人口は5万2千人(2010年現在)だが、1983年からは15%減った。建築物に空き家が占める地域ごとの比率は最大で18・5%に達している。

地味に人気 空き家ツアー


 山北町・共和地区にある山崎暁夫さん(35)、世津子さん(33)の住まいは竹林や川に囲まれている。築約40年の木造家屋を改築した3LDK。庭には「五右衛門風呂」を沸かすためのまきがうずたかく積まれている。周囲に人家はない。

 夫妻とも勤め先は隣の南足柄市。「生活環境は変わらず、田舎暮らしの楽しさを味わえる」

 小田原のマンション暮らしだったが、静かな環境でのマイホームに憧れ、2010年春に移り住んだ。移住者増加のために町が開いた「空き家バンク」を利用した。地元の不動産業者と提携して、住む人がいなくなった土地や家を登録する仕組みだ。

 町は昨年「空き家見学ツアー」も始めた。ワゴン車で物件を回り、合間にそば打ち体験や地域活動の紹介、住民との意見交換も盛り込んだ日程が好評。その後もミニツアーが続く。カントリーライフを真剣に考える人は多い。


山北町の空き家見学に訪れた夫妻=山北町山北
山北町の空き家見学に訪れた夫妻=山北町山北

 「若いころは都会の暮らしに憧れた。定年後はゆっくり暮らしたい」。東京・高輪のマンションに住む夫妻も、ついのすみかの見学に訪れた。「地域に活躍できる場がほしい。自分がここでどんな生き方ができるかを案内してもらえるとありがたい」

 町を通じた09年度以降の移住者は、今年4月末現在で55組を数える。「少子高齢化で集落が寂れる現状に、社会増で少しでも歯止めをかけたい」(山口裕之・定住対策室長)。ただ通勤や子育てなどの利便は山間部になるほど厳しくなる。移住者による地域活動参画への期待値も未知数だ。

落ち込み続く三浦半島・県西


 人口が今年4月時点で905万人を超えている神奈川県だが、横須賀・三浦地域と県西地域では人口減少傾向が著しい。都心回帰の影響を受けた横浜・川崎や、新たな住宅開発が続く湘南から取り残されている。

 横須賀、三浦両市の人口は約46万人(2012年4月)。10年間で2万人落ち込んだ。横須賀市は4月に藤沢市に抜かれ、3政令市に次ぐ県内人口4位の座を明け渡した。三浦市も4月、人口で寒川町に抜かれている。

 三浦半島で目立つのは、勤労世帯の市外転出が市内転入を上回る傾向だ。横須賀市は市内に初めて持ち家を構える若年層を対象にした助成制度を導入した。だが実際には、多くが既存市民による賃貸などからの住み替えに使われている。

 小田原、南足柄両市と足柄上郡、足柄下郡を合計した県西地域の人口は12年4月時点で35万5千人。10年間で6千人減った。

 ただ自治体ごとには傾向に差が見られる。小田原市は2000年、改正地方自治法に基づく「人口が20万人以上」との要件を満たして特例市に移行したが、翌01年には割り込み、その後も減少を続けている。一方、企業立地が好調な開成町の人口は1万6千人で、10年間で3千人増えた。

(2012/5/29)


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