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衆院で強行採決
国会前デモ現場ルポ・15日

政治行政 神奈川新聞  2015年07月15日 18:56

国会前で抗議の声を上げるSEALDsのメンバーとデモ参加者ら
国会前で抗議の声を上げるSEALDsのメンバーとデモ参加者ら

 安全保障関連法案が衆院平和安全法制特別委員会で強行採決、可決されたのに伴い、国会前では大規模なデモが行われた。記者が現場からリアルタイムで伝えた。

午後11時


 シュプレヒコールはやまない。

「なんか自民党感じ悪いよね」「戦争法案絶対反対」「集団的自衛権はいらない」「国民舐めんな」「生活守れ」「子どもを守れ」「憲法守れ、憲法守れ」


午後10時15分


 駅に向かう男性カメラマン(65)はほほ笑んでいた。

 「若者たちが頼もしい」

 70年安保闘争が起きたとき、18歳だった。

 「あの頃も非常に大きな盛り上がりをみせたが、デモ参加者と一般大学生との間には隔たりがあった」

 この日、デモに参加する大学生や高校生らの姿に、胸を打たれた。

 「これからは若者の時代。一過性にせず、これからも権力を監視し続けていってほしい」


午後10時


 国会前にいる大学生のスピーチが聞こえる。

 「今日、ここに7万人の人がいる。民主主義は終わった、と言った人がいた。でも、こうやってまた始められるんですよ」

 特定秘密保護法が成立した2013年12月から1年7カ月。あの日、立ち上がった学生たちが7万人の中心でマイクを握っている。

午後9時半



 国会前から約200メートル先に「給水所」を見つけた。

 「おつかれさまです。喉渇いていないですか。水あります」

 デモの参加者に声を掛けるのは、都内の食料品会社に勤務する男性会社員(40)。毎週金曜日、デモに通ってきたが、この日は「かなりの人が来ると思ったのでサポート役に徹することにしました」。仕事終わりに、業務用スーパーで2リットルの水を12本と紙コップ400個を購入し、駆け付けた。

 強行採決された。しかし、「闘いはむしろ、これから。安倍政権をつぶさなくてはいけない」


午後9時


 取材が一区切りしたところで、国会前のデモ最前線へと再び向かう。近づくに連れ怒号が飛び交う。

 「安倍晋三から命を守れ!日本を守れ!」

 なかなか前に進めない。警視庁の警察官が1メートル間隔で立っている。すみません、通してください、すみません…。

 ようやく最前線に到着。精神科医・香山リカさんのスピーチが始まった。

 「大人たちが、こんな日本にしてしまってごめんなさい!本当なら、楽しい夏休みが待っているのに、デモに行かなきゃならない世の中にしてしまってごめんなさい!」

 「そんなことないぞ!一緒に頑張ろう!」

 湧きあがってくる民の声、声、声。携帯電話で記事を打つ手が震えた。


午後8時


 「帰ってもよかったんだけど」。
午後8時過ぎ、スーツ姿のサラリーマンの男性がデモの輪に加わった。
製紙会社の営業担当。高校を卒業して8年になる。連日の猛暑で疲れ気味だ。退社後に真っすぐ自宅に帰ることもできた。

 「でも、安倍政権になって強行採決、何回目だ?って思った。憲法を守らなければならないのは国家なのに、あまりにもやり方が横暴だ」

 勤務する会社の経営者は、安保法案に賛成の立場。社内で「安保法案に賛成します」という署名に応じるよう、署名用紙が回った。違和感を抱いた。

 「自分の意思がある。私は安保法案に反対。その意思表示をするためにも今日来た」


午後7時50分


 子どもを抱っこした男性が、目の前にそびえ立つ国会を見据えていた。川崎市中原区在住の34歳。俳優であり、来月3才になる長男の父親でもある。

 「デモは苦手。人混みも、うるさいのも嫌いなんです。でも、今日は来ないといけないと思った。安倍政権がしたことはあまりにもひどい」

 国会審議での不誠実で不合理な説明が許せなかった。

 「後方支援とは軍事用語でもロジスティックと言われているが、戦争に参加することを意味する。それなのに、政府は答弁で巻き込まれないという。論理的に破綻していることを、ひたすら繰り返す態度は国民をあまりにもばかにしている」

 シュプレヒコールが響き渡る中、息子と2人で約3時間、国会前に立ち続けた。


午後7時半


 日の沈んだ国会前に、子どもをおんぶしてデモの輪に加わる女性がいた。綾瀬市の会社員(29)もまたこの日初めて、デモに足を運んだ。

 「戦争をする国で子どもを育てたくない」

 政治のことはあまりよく分からない。でも、今回の安保法案には違和感を隠せなかった。

 「戦後70年、日本が守ってきた憲法9条を解釈で簡単に変えてしまうってなんだろう。国民の声を聞かずに、政府が都合よく憲法を変えてしまったら、何でもできてしまう」

 デモの輪の中に同じように子ども連れの母親らの姿を多く見た。

 「子どもたちを守りたい。お母さんたちの思いはその一つです」

午後6時



 国会前から約50メートルほど離れた銀杏並木の一画で3人組の女子大生たちを見つけた。「今日、初めてデモに来ました」。少し緊張した様子の彼女らは文教大学国際学部の2年生。「勝手が分からなくて戸惑っています。熱中症大丈夫かなと思って、お茶とか買い込んできてしまいました」

「なぜ、今日国会前に足を運んだの?」
記者の問いに都内在住の女子大学生(19)が答えた。

 私たちと同じ世代の大学生がデモをしているのは知っていた。来たかったけれど今までは勇気がなかった。でも、この日の強行採決に居ても立ってもいられなくなった。今動かないと、きっと後悔する。私たちの未来が変えられようとしているときに、もうびびってはいられない。勇気を出して、挑戦しようと思った。

 この女子大学生は 仲良しの友人を誘って国会前に駆け付けた。隣の友人(19)がうなずき、訴えた。

 安倍首相は『国民の理解はまだ得られていない』と言う。それなのに強行採決する意味が分からなかった。憲法9条を拡大解釈する意味もおかしい。日本は国際社会の中で平和国家を築いてきた。その日本が戦争を始めてしまったら、平和国家という基準も大きく下がってしまうと思う。

 次々と国会前に人が集まってくる。こんなにも多くの人が行動している。
藤沢市在住の女子学生(19)は気持ちの高ぶりを抑えるようにゆっくりと言葉を継いだ。

 「デモを見ていて、同じ国民だけど、どこか他人事だと考えていた。でも、今日この場に立って、違うんだと分かった。ただ『戦争はダメ』と思っているだけではなく、こうやって声に出して、行動に移さないと」

 国会前でマイクを握る人たちの輪に近寄っていった。


午後5時40分




 国会前。うだるような昼間の暑さは和らぎ、時折涼しい風が吹く。蝉の鳴き声とともに市民の声が聞こえてくる。強行採決から5時間。「戦争法案廃案!」「9条を壊すな」。多くののぼり旗が立つ国会前には、安保法案に反対する市民が次々と集まってきている。次第に熱気を帯びてきた。


安保関連法案の強行採決に抗議の声を上げるデモ参加者=国会前
安保関連法案の強行採決に抗議の声を上げるデモ参加者=国会前




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