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安保法案 採決を前に
【カナロコ・オピニオン】(2)「強行」に映る国家主義

カナロコ・オピニオン 神奈川新聞  2015年07月15日 03:00

カナロコ・オピニオン
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 強行採決は許されないと批判するとき、何をもって強行とするのかという議論がある。安全保障関連法案をめぐっては、審議が不十分なまま採決されようとしているだけでなく、法案そのものが憲法違反の疑いが強い。憲法解釈をひっくり返せば集団的自衛権の行使が可能になるという政府の説明にはやはり無理がある。法案を通すことで自らを縛る憲法の制約を振りほどこうとしているという意味において、過去の強行採決とは異質でもある。

 それにしても、どうせ支持率は下がるのだから法案をさっさと通してしまおうといわんばかりの振る舞いはどうだろう。世論を顧みない短慮に、ある光景が苦い思いとともによみがえる。

 2010年2月、核武装論者の元航空自衛隊幕僚長が代表を務める政治団体の設立総会、その壇上に安倍晋三氏の姿があった。

 「命を守る? 医者じゃあるまいし。総理大臣の使命は国家を守ることだ。それには日米同盟が必要なんだ」

 当時の鳩山由紀夫首相が施政方針演説で「命を守りたい」と繰り返したことを揶揄する中でむき出しになった国家主義。政権を奪われた民主党への対抗軸を打ち出そうとするほどに「国家」や「国柄」といった時代錯誤が語られ、それはもはや、再浮上に躍起になるあまり、かえって極端に振れてしまうという、うらぶれた政党の哀しい末路にしか映らなかった-。

 悲願はいま、果たされようとしている。民意の切り捨ては立憲主義からも民主主義からも遠い現政権の国家主義的性質のなせる業だ。個人を重んじない政治はあらゆる場面でその声を無視し続け、やがて戦争突入までも強行採決するのだろう。

 (論説委員・石橋 学)


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