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時代の正体〈134〉立ち上がる若者たち(下)続ける自由守る闘い

時代の正体 神奈川新聞  2015年07月07日 09:41

東京・渋谷で行われたデモで横断幕を手にする西さん(右) =6月14日(七田人比古さん撮影)
東京・渋谷で行われたデモで横断幕を手にする西さん(右) =6月14日(七田人比古さん撮影)

 見渡せば確かに少数派だ。でも、それはいけないことなのだろうか。札幌市に住む浪人生、西穂波さん(18)は考える。

 戦争は嫌だし、憲法は守られなければならないと思う。いや、どんな主張であっても、口にする人の立場によってその意味が変わるということはないはずだ。

 西さんは共産党系の青年組織、日本民主青年同盟(民青)の一員であることに誇りを持っていた。あの日、東京・渋谷の街に立つまでは-。

中傷


 集団的自衛権をめぐって礒崎陽輔首相補佐官とツイッターで論争した5日後の6月14日、西さんは渋谷へと向かった。同世代の学生たちでつくる「SEALDs」(シールズ=自由と民主主義のための学生緊急行動)という団体が企画したデモ。集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法案に反対の声を上げようと「戦争立法反対!」の横断幕を手に先頭を歩いた。

 「民主主義が危機にさらされたとき、人は怒りを表明していいと思う。『おかしい』とただちに口にする。権力への対抗は最大限の言葉でしなければならない。必要ならば、街に出て叫ぶことだってある」

 そこに壁などない。道行く人の好奇と共感のまなざしを受け、そう実感できた。主催者発表で参加者は約6千人を数えた。

 胸にともった希望がぐらぐらと揺さぶられるのに時間はかからなかった。

 渋谷のデモの様子がテレビの報道番組で取り上げられると、インターネット上で根拠のないデマが飛び交った。

 〈こいつら共産党の別組織〉〈民青がバックで間違いない〉
 西さんは事実無根の中傷に憤り、心を痛めた。

 「渋谷のデモには主義主張を超えて6千人も集まった。共産党にも民青にも、それだけの人を集める力なんてない。あったらとっくにやっている」

日常


 民青に入ったのは15歳のとき。きっかけは東京電力福島第1原発事故だった。

 「テレビも新聞も事故報道一色。何がそんなに問題なのかと新聞を読み、本をめくり、自分が何も知らなかったことに気付いた」

 地震大国でありながら、50基以上の原発を抱える原発大国であること、使用済み核燃料の処分方法が決まっていないこと、調べるほどに原発反対の考えに傾いていった。

 講演会や勉強会、デモに足を運んだ。参加者の中に10代の姿を見つけることは難しかった。学校の仲間に話題を振ってもかみ合わなかった。

 「世界で唯一、原爆を落とされた日本がその核を使って発電してきた。反対の声がさんざん切り捨てられ続けて今がある」

 現実の壁に焦燥感が芽生えたとき、両親に勧められたのが民青だった。同年代が集まり、互いの思いを口にし、聞く。新鮮だった。受け入れられたような気がした。

 政治の世界や世の中で何が起きているのかを学び、それはどのような意味を持つのかを知り、自分はどう行動するのか。民青での活動はごく当たり前の日常として続けてきた。

揺れ


 SEALDsの渋谷デモから2週間ほどたった6月29日、フェイスブックに心中をつづった。

 〈私はさー、民青が好きなんですよ。なんでかって、本当に真面目で勉強熱心であったかい人が多くて何でも話聞いてくれて受け止めてくれる人がたくさんいるから。本当に優しいんだよねー。(中略)色々言われるし、色々複雑な気持ちもあるけど、抜けたいなんて思ったこと一度もない〉
 誰に向けて書くでもなく、自分の気持ちを確かめるようにつづった。

 「SEALDsの活動を民青が支えているという実態はまったくない。SEALDsはそういう既存の組織とは無関係に声を掛け合ってできあがった。何の後ろ盾もなく懸命に築き上げてきた。だからここまで輪が広がっている。そういう努力を一蹴するようなデマは許せない」

 こうも思っている。「SEALDsのメンバーと民青について話したことはない。ツイッターで書いているから私が民青だとはみんな気付いていると思う。SEALDsの中心メンバーがツイッターで『基本的に共産党も民青も嫌い』と書いていた。会ってゆっくり話せる時間があったら『なんで嫌いなの?』って普通に聞いてみたい」

実感



 本当は地元で「SEALDs HOKKAIDO」を立ち上げたい気持ちがあった。「でも私がやったら『民青がやっている』と批判されるから…」

 言い知れぬ圧迫感、この息苦しさの正体は何だろう。

 札幌市内で6月26日、19歳のフリーターが呼び掛け、約700人が集まった。「戦争したくなくてふるえる」と銘打ったデモ。運営を手伝い、西さんは迷いを吹っ切るように街頭で声を響かせた。

 沿道から視線が向けられるのを感じる。生の実感、それは自由を謳歌(おうか)してこその喜びといえた。

 「やっぱり、おかしいと思うことをおかしいと言うのは、とても大事」

 安保法案に反対するのも、それが自由を脅かすものだからだ。ないがしろにされようとしている憲法こそは

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