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 試合する喜び満ち
公立の挑戦(下)横浜緑園総合

高校野球 神奈川新聞  2015年07月02日 11:54

練習前に円陣を組み、声を上げる横浜緑園総合ナイン。エースで主将の田中(中央奥)がけん引する=横浜緑園総合高
練習前に円陣を組み、声を上げる横浜緑園総合ナイン。エースで主将の田中(中央奥)がけん引する=横浜緑園総合高

 着慣れていないユニホームは真っ白。掛け声はばらばら。ノックでは何度もグラブからボールがこぼれ落ちる。横浜緑園総合の練習は少し格好が悪い。ただ、白球を追う選手の表情は強豪のそれと何ら変わらない。

 主将でエースの田中駿平(3年)が言う。「うまくはないけど野球好きが集まった」。夏の出場は実に6年ぶり。背番号1には試合ができる喜びがあふれている。



 同校は慢性的に部員不足だ。岡津高校と和泉高校の統合で2008年に創立。野球部は同時にできたが、全生徒の7割以上が女子生徒のため、部員集めはままならない。

 田中が1年春に入部した時の部員も先輩が2人。いつの間にかメンバーの顔ぶれは変わり、9人になることは一度もなかった。

 「続けることに意味があるのか悩んだ。辞めたいと何度も思った」。支えたのは後悔に似た思いと責任感だった。中学時代に野球部を1年半で退部したときのような諦めを再び抱きたくはなかったし、先輩の情熱を途絶えさせたくもなかった。

 人もまばらなグラウンドで率先してキャッチボールを行い、基礎を未経験者に教え、時にはノックバットも握って練習してきた。

 転機は春だった。横浜旭陵との合同チームで出場した3月の県大会地区予選。初めての公式戦で「人のいる球場でプレーする楽しさ」を知った。

 「部員が集まれば夏の大会に出られます。ぜひ一緒に大会に出てください」。入学式の後、校門で手製のポスターを手に声をからした。部活動紹介では1年生の全生徒を前に体育館の壇上で声を張った。

 熱意は伝わった。選手8人、女子マネジャー2人。計10人の1年生が仲間に加わった。



 頼もしい援軍もいる。4月に赴任してきた飯塚祐司教諭(32)だ。高校時代は千葉の東海大浦安でプレーし、2年時の2000年夏には全国選手権大会に出場。準々決勝で横浜を下すなど準優勝を飾っている。

 「甲子園に行った先生がうちの学校に来る」。本間正樹部長(58)からそう伝え聞いた田中は、野球部の練習をのぞきに来た飯塚教諭に思いをぶつけた。「野球を教えてください」。二つ返事で引き受けてくれた。

 新監督には教えたいことがたくさんある。ただ、今はぐっと腹に収める。「言いたいことは山ほどある。でも部の形を残すには一人も辞められないし、まずは野球の楽しさを知ってほしい」。ノックの打球は厳しく、そして優しい。

 練習試合は連敗続き。40失点を喫した試合もある。ただ、いくら取られようとも諦めない。田中は「絶対に完封だけは避ける。やられたらやり返すがうちのスタイル」と胸を張る。

 最後の出場は創部の翌年の09年夏。まだ公式戦は勝っていない。参加することに意義があると田中は思わない。「『後悔のないようにやればいい』という言葉が嫌い。勝たなかったら絶対に後悔する」。最初で最後の夏がやって来る。


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