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春の快進撃再現へ
公立の挑戦(中)橘 

高校野球 神奈川新聞  2015年07月01日 12:06

橘の打撃練習。ネットを挟んですぐ隣ではサッカー部が汗を流している=橘高
橘の打撃練習。ネットを挟んですぐ隣ではサッカー部が汗を流している=橘高

 武蔵小杉の高層マンション群を望む川崎市中原区の住宅街。橘のグラウンドは防球ネットで区切られ、縦横50メートルほどのスペースだけを野球部が使っていた。ナインが1球ごとに叫びながらトスを打ち込んでいる。

 内角や外角にトスを投げ分けたり、体を開きながら逆方向に流したり。「目の前のネットの先に球場をイメージしながら打っているんです」。主将の下原和輝(3年)が言う。

 すぐ隣ではサッカー部が練習。フェンスを挟んですぐ脇をJR南武線が通るため、フリー打撃は禁止されているという。

 ファウルラインをなぞるように陸上トラックの白線が引かれ、内野ノックが続く中を陸上部員が駆け抜けていく。その度にマネジャーが大声を出し、プレーは中断する。フリー打撃や外野ノックは週に2回ほど、等々力球場を借りたときにしかできない。
 



 キャプテンも最初は「こんなところでやっているのか」と驚いたことを覚えている。他の公立校にも増して、野球に集中できない環境で連日、朝練習から全選手がトス打撃に取り組み、月1万本のスイングをノルマとしてこなしている。

 就任6年の福田茂監督(47)は古豪・法政二で捕手として活躍した後、公立校で長年、指導してきた。「限られた環境で何ができるかを考えたら、磨けるのは打撃だった。公立の殻を破るには、とにかく振らせる。(トス打撃で)1本、1球の想像力が試される」

 地道な取り組みはこの春、花開いた。春季県大会準々決勝。ナイターとなった横浜スタジアムで、昨秋の王者、平塚学園のエース高田孝を相手に先発全員16安打で12-5の快勝。創部69年目で初めての夏の第1シードをつかんだ。3ランを放った指揮官の長男、福田耕平(3年)は「あの試合はあの試合。次へ向かっている」と頼もしいほど冷静に、さらにトス打撃を続けている。



 強打だけではない。春の3回戦で湘南学院に3-1、続く4回戦の鎌倉学園には3-0と私学相手に競り勝った。原動力は、南生田中時代に全国中学校大会で8強入りした経験がある寒水晃大(3年)と上條智史(同)のバッテリー、主砲肥後洋輝(同)の主力トリオだ。

 寒水と上條は小学校からバッテリーを組む。私学からの誘いも受けたが「公立の主力として上を目指そう」と3人そろって橘の門をたたいてから2年半が過ぎた。

 2000年以降、神奈川の公立校では百合丘、桜丘、横浜商、厚木西、厚木北の5チームが第1シードで夏を迎えた。しかし、その夏に8強入りできたのは04年の厚木西だけ。本番では、どうしても受け身に回り、強豪校に苦戦してきた歴史がある。

 「夏は上から目線じゃなく、もう一度下からはい上がっていく」とキャプテン。再び打ち勝って、春の快進撃を再現してみせる。


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