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ガジュマルに迫る期限 苗木の“延命策”も引き取り手なく 箱根の植物園跡地

社会 神奈川新聞  2015年06月20日 03:00

施設跡地にたたずむガジュマル。過度の蒸散を避けるため、枝の大半を切った =箱根町芦之湯
施設跡地にたたずむガジュマル。過度の蒸散を避けるため、枝の大半を切った =箱根町芦之湯

 3月に閉所した箱根町の熱帯植物園「町立芦之湯フラワーセンター」(同町芦之湯)のシンボルツリーだったガジュマルが、行き場がなく危機にさらされている。町は複数業者と懸命な交渉を続けているが、いまだに引き取り手の決定までには至っていない。建物を新しく利用する業者も確定し、7月に賃貸の形で受け渡される。タイムリミットが迫る中、ガジュマルは現在も誰もいない跡地に黙ってたたずんでいる。

 芦之湯のガジュマルは鹿児島県の奄美大島から運ばれた、樹齢200年超の“長老”。高さ約8メートル、幹回り約3・5メートルと本州最大級の大きさを誇り、フラワーセンターがオープンした1988年に根を下ろしてからずっと箱根で生きてきた。

 町は、施設の閉所が決まった2014年末から約半年間、植物売買の仲介業者を利用するなどして全国規模でガジュマルの移植先を探してきた。しかし、高さ2~3メートルほどしかない扉からの大木搬出がネックとなり、交渉は難航。契約直前までこぎつけても、現地を見にきた業者に「やっぱり運び出せない」と断られたこともあった。

 現在は「搬出の問題さえ解決できれば引き取りたい」という複数の業者を引き留め、搬出方法について話し合いを重ねている状況という。ガジュマルへの水やりは、地域を巡回する町職員や警備会社が行っている。町観光課の秋山智徳課長は「せっかく長年、箱根で根付いてきた木。どうにかして生き続けてほしい」と頭を抱える。

 施設跡地を新しく利用する「ピエロタ」(東京都中央区)は、既存の建物を改装し、芸術色の強いミニチュアの家「ドールズハウス」を展示する美術施設をオープンする予定。ミニチュアは職人の手による精巧なもので、展示に適した温度・湿度調整が必要という。同社は「木が残ってしまった場合、生かせるよう努力する方針だが、展示作品の性質上難しいかもしれない。何とかして、町には新しい行き先を見つけてほしい」と困惑した様子で話した。

 施設跡地の同社への貸し出しは、今月16日の町議会6月定例会で正式決定。7月中にも引き渡しが完了する見込みとなった。これがガジュマルを残せるタイムリミットとなるかもしれない。

 町役場では数カ月ほど前、枝の挿し木でガジュマルの苗木を発根させることに成功。現在は3本が高さ40センチほどに伸びている。万一のときを考えての“生き残り策”だ。「ちゃんと育って、命をつないでくれたらいいな、と」。秋山課長は、土から顔を出す新しい根の一部をいとおしそうに眺めながらつぶやいた後に、こう付け加えた。

 「でも、やはりあのガジュマルに生き続けてもらいたいという気持ちが絶対的に強いんです」


ガジュマルの苗木を眺める秋山課長=箱根町役場
ガジュマルの苗木を眺める秋山課長=箱根町役場

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