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戦争が日常だった 庶民描く老舗劇団、横浜で舞台上演へ

カルチャー 神奈川新聞  2015年06月08日 03:00

熱がこもる「夏の日の陽炎」の稽古。主役の江島裕一郎さん(25)は「役の気持ちを想像しながら演じている」
熱がこもる「夏の日の陽炎」の稽古。主役の江島裕一郎さん(25)は「役の気持ちを想像しながら演じている」

 戦時を過ごした庶民の哀歓を描く舞台「夏の日の陽炎」が、横浜市中区の横浜にぎわい座・のげシャーレで13、14の両日に上演される。戦地から帰還した若者らが1947年、横浜で起こしたアマチュア演劇の老舗、劇団麦の会の公演。常套(じょうとう)句に頼る悲劇でも、史実をなぞる実録劇でもない。時代の波にのまれながらも時に笑い、生存の証しを刻もうとした市井の人に、戦争の一端を語らせる。

 舞台はとある町の防空壕(ごう)の中。夫が召集された女性や、今まさに出征する青年たちが肩を寄せ合っている。

 「大きな話は難しいけれど、親や子を思う心は変わらないだろうから…」と、作者で演出も務める劇団代表の山口雄大さん(46)は話す。20代だった99年に書き上げ初演。2005年の再演を経て3度目の今回に至る間に、結婚して親になった。「自分の作品ながら、境遇が変わったことで見方も変わってきた」。親子の情が一層切実に感じられるのだ。

 戦争という題材は、中国で軍隊生活を送った劇団の初代代表、高津一郎さん(91)=同市西区=の影響が色濃い。終戦後、復員を待つ間の演芸会で、演じることを知った。横浜で「麦の会」を設立したのも「戦争で失ったものを取り戻すため」だったという。自らの青春時代を翻弄(ほんろう)した戦争にこだわり続けた。

 「高津さんの影響はあった。だからこそ、同じことをやってもかなわないと思って」。山口さんが本作で試みるのは、役を介して人間を表現すること、つまり演劇そのもの。それが集約されるのが、防空壕で展開される劇中劇の場面だ。空襲警報の下、老若男女が大福や納豆の仮面をかぶって喜劇の稽古に励む。荒唐無稽のようで、極限状態にあってなお「悲惨」「不幸」と割り切れぬ感情の豊かさが、ぐっとせり出す。

 「僕らの武器は演劇だから、笑わせて泣かせて、あの時代を生き抜いた人々の強さを表現したい」。稽古場の山口さんは、劇団員に向かって「人として舞台に立て」と声を掛ける。

 開演は13日午後2時と同6時半、14日同2時(計3回)。前売り料金は、2500円ほか。問い合わせは劇団麦の会電話090(1806)2008。


「『悲惨』という先入観に固まらず『普通のこと』に想像をめぐらせたい」と話す山口雄大さん=横浜市神奈川区の稽古場
「『悲惨』という先入観に固まらず『普通のこと』に想像をめぐらせたい」と話す山口雄大さん=横浜市神奈川区の稽古場

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