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野島理紗子 孤高のサイクリスト(横浜創学館2年)
夢の頂へ笑顔でこぐ 速くて“かわいい”目標

スポーツ 神奈川新聞  2015年06月05日 13:58

約10年ぶりに女子選手として県高校総体に出場した野島=4月26日、静岡県伊豆市の日本サイクルスポーツセンター
約10年ぶりに女子選手として県高校総体に出場した野島=4月26日、静岡県伊豆市の日本サイクルスポーツセンター

 県内の高校自転車競技界に、一人きりで走ってきた女子選手がいる。横浜創学館2年の野島理紗子。競い合える仲間は近くにおらず、目指す頂もまた遠い。それでも周囲の追い風を背中に受け、サイクリストはスピードを上げている。 

 4月26日、静岡県伊豆市の日本サイクルスポーツセンター。男子が顔をゆがめる厳しい上り坂でも白い歯をのぞかせ、野島は進んでいく。

 「きつくないわけじゃないんだけど、応援している人に苦しい顔は見せられないから」。鮮やかなピンク色のバイクにまたがり、県高校総体女子20キロ個人ロードレースをさっそうと走り抜けた。

 この日、出場した女子選手は野島ただ一人。46分16秒34で完走した16歳は「速い選手はかっこいい。それに私はかわいいもプラスしたい」とさわやかな笑顔を向けた。


 1年生だった昨年、野島は県高校総体で実戦デビューした。女子選手の出場は11年ぶり。「県で1位と言っても友達には『一人じゃん』って笑われる。もっとみんなで争いたい」。そう言う自分自身も、ペダルを踏み始めたのはわずか1年半ほど前だった。

 陸上の短距離に打ち込んでいた中学時代、横浜高の自転車部で活躍していた2人の兄の影響から競技と出合った。「高校で何をやろうか考えたとき、お兄ちゃんがやっていて、いいなって」

 中学3年の秋、大人に交じって出場した初レースは惨敗。これで火がついた。現在はトレーニングを兼ね、寒川町の自宅から横浜市金沢区の学校まで35キロほどの道のりを自転車で通う。「最初は2時間かかったけど今は1時間半に縮まった」。嫌だった日焼けも、太ももの筋肉も「頑張った証し」と誇らしく思える。


 全国的にも女子のサイクリストは少ない。日本自転車競技連盟によると、競技者登録をしている約7千人のうち女子は約450人。男子の10分の1にも満たない。

 ただ、10年前は約300人。年々増加傾向にあるといい、全国高体連自転車競技専門部の統計でも女子選手は2014年度は111人と前年度の85人から増えている。男子が減っているのに対して、女子はここ数年増加に転じてきている。

 同専門部は「自転車ブームを背景に、小さいころからクラブチームに入る動きが広がっているほか、(来年の)岩手国体から正式種目になることもあり、高校から始める選手も増えている」と指摘。今後は、女子が公開競技にとどまっている全国高校総体(インターハイ)での正式種目採用に向けて「競技者の増加を期待したい」という。


 「いつも一人だから(他選手の)後ろに付く練習ができない。(トラックの)バンク練習のときも男子に付いていけるのは最初のアップくらい」。どんなに追い込んでも、レースに必要な実戦感覚は身に付かない。文字通り孤軍奮闘の野島だが、頼もしい援軍がいる。


全国の頂点を目指し戦う野島(右)。その背中を後輩の舩生も追う=横浜市金沢区の横浜創学館高
全国の頂点を目指し戦う野島(右)。その背中を後輩の舩生も追う=横浜市金沢区の横浜創学館高


 一番上の兄の健太郎さん(22)はこの春の全国選抜大会で相手選手のタイムを調べ、作戦を授けてくれた。次兄の康平さん(20)もメカニックの技術を教えてくれる。

 他校の男子の先輩も「俺に付いてこい」と引っ張ってくれる。今春には新たな女子部員、1年生の舩生麻衣が入ってきた。決して独りぼっちではない。

 正式種目になる岩手国体の年は最終学年。「全国大会でメダルを取るのが目標だし、もっとみんなに自転車競技を知ってもらいたい」。5月10日の県高校総体500メートルタイムトライアルでは40秒340と自己ベストを更新した。夢の分だけペダルに込める力は増している。


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