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箱根山「警戒レベル2」1カ月 引き下げ判断難しく

社会 神奈川新聞  2015年06月05日 03:00

 活発な火山活動が続く箱根山(箱根町)の大涌谷で現場調査を行った気象庁は4日、温泉供給施設からの「暴噴」がやや弱まっているのを確認した。1日当たりの火山性地震の回数も比較的少ない状態が続いているものの「終息に向かっているのか、一時的な現象なのかは、現時点では判断できない」(火山課)としており、引き続き注意深く監視する方針だ。

 また、県温泉地学研究所の竹中潤研究課長はこの日の会見で、山体の膨張を示す地殻変動について「傾斜計の変化は少し鈍化傾向が見えるが、GPS(衛星利用測位システム)は依然、伸びが見られる」と述べ、収まってはいないとの認識を示した。

 4月26日に始まった一連の火山活動では、5月3日に温泉供給施設からの激しい噴気が確認され、5日に地震が急増。6日に5段階の噴火警戒レベルが2(火口周辺規制)に引き上げられた。気象庁はその後も機動観測班を派遣し、蒸気の勢いが継続しているのを確認してきたが、今回の調査で初めて「前回調査時の21日と比べ、やや弱まっている」と判断した。

 温地研が捉えた微小な火山性地震の回数は5月15日の509回が最多。6月に入ってから200回を超える日はないが、これまでの地震総数は5500回を超え、2001年6~10月に記録された観測史上最多の4230回を大きく上回っている。



◇箱根山「警戒レベル2」続く
 大涌谷周辺の活発な火山活動で箱根山(箱根町)の噴火警戒レベルが初めて2(火口周辺規制)に引き上げられてから、6日で1カ月となる。地震活動や温泉供給施設の「暴噴」は一時に比べ落ち着いてきたが、終息はいまだ見通せない。専門家からは「警戒レベルは上げるより下げる判断が難しい。慎重に見極めるべきだ」との指摘が出ている。

 大涌谷周辺で観測されている現象は、微小な火山性地震と温泉供給施設からの激しい噴気、山体の膨張を示すわずかな地殻変動だ。地下にあるマグマなどの移動を示す火山性微動や低周波地震は確認されておらず、明確な噴火の兆候は現れていない。

 「三つの現象がそろっているからこそ、レベルを引き上げている。どの現象がどの程度収まれば下げられるのか。気象庁などと議論していかなければ」。今後果たすべき役割の重さを県温泉地学研究所の竹中潤研究課長は受け止める。

 気象庁も「引き下げを判断する数値的な基準があるわけではない。温地研など関係機関と情報交換しながら判断したい」。噴気がやや弱まっていることを4日に確認したが、「1カ月ぐらいは推移を見極める必要がある」と強調。「レベル1(活火山であることに留意)への引き下げも初のケースとなる。経験がない以上、慎重に判断せざるを得ない」と説明する。

 双方の念頭にあるのは、レベル2の基準となった2001年の火山活動だ。約5カ月という長期間に及んだ当時の地震総数を既に上回っている今回は「01年より短い期間で終わるとは考えにくい」(気象庁)とみている。


 加えて観測上の課題もある。「地殻変動が収まるかどうかが鍵」とみる温地研前所長の吉田明夫・静岡大客員教授は「地下深い場所のマグマの状況を探る上でGPS(衛星利用測位システム)のデータが非常に重要だが、精密な観測結果が出るのは2週間ほど時間が必要」と指摘。さらに、比較的発生回数が少ない地震についても「起きる場所の変化に注意が必要。警戒レベルを下げた後に何かが起きるという事態だけは避けなければならない」と慎重な見方を崩さない。

 大涌谷の立ち入り規制区域で2日にガスを採取し、「噴火の可能性は下がっている」と判断した東海大の大場武教授も「レベルの引き下げは別の問題。判断はかなり難しい」とみる。

 01年当時、温地研に在籍していた防災科学技術研究所地震・火山防災研究ユニットの棚田俊收副ユニット長は「あのときでさえ噴火は起きていないのだから、今回もこのまま終息する可能性はある」としつつ、指摘する。「レベル3(入山規制)に引き上げるシナリオがあり得る以上、次の段階であるレベル4(避難準備)も想定し、箱根に住む人たちの避難対応をしっかりと準備しておくべきだ。それがあったからこそ、口永良部島の噴火でも死者が出なかったのだから」


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