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就労体験の現場・横須賀発〈上〉 受け皿 「負の連鎖」断ち切れ

社会 神奈川新聞  2015年06月04日 11:23

ひきこもりの人たちを受け入れてきた4事業所の代表者ら。正式に登録証が交付された=横須賀市役所
ひきこもりの人たちを受け入れてきた4事業所の代表者ら。正式に登録証が交付された=横須賀市役所

 横須賀市の「社会的居場所づくり貢献事業所」の登録証交付式には農業や介護、飲食業など、さまざまな業種の代表者の姿があった。ひきこもりの人や生活困窮者の自立支援に無償で就労体験の場を提供している理解者だ。

 市が認定したのは8事業所。これまでの試行で4事業所が延べ15人を受け入れ、2人が正社員となった。

 「喫茶ふるさと」では、小学生時代に受けたいじめで心に傷を負い、ひきこもりを経験した女性(22)が週1日のペースで通う。接客や配膳などを担当。同店の千葉理恵子代表は「最初来たときは前髪で目を隠していた。それが髪を結ぶようになり、徐々にできることも多くなった」と成長ぶりに目を細める。

 「鐘の鳴る丘訪問介護センター」では、清掃や入居者のシーツ交換などが主な仕事だ。かつて就労体験で訪れていた男女2人は働きぶりが認められ、正規採用された。管理者の岡村薫さんは「仕事についてこちらからあまり強く言うのでなく、辛抱強く慣れるのを待った」と振り返る。

 企業にとっては、若者らの「受け皿」として体験の場を提供するのと同時に将来の人材確保という視点も併せ持つ。岡村さんは「求人をかけても若者の応募が少ない現状もある。就労意欲を高め、きちんと働く形が整えば」と期待する。

 市自立支援担当課長の北見万幸さんは「昔なら『仕事に行けばいいじゃないか』と言っているだけだったが、それでは解決しない。彼らの居場所をつくり、社会との接点を持たせることが大事」と指摘。訓練的要素の強い職場では長続きしない場合もあるため、「事業所がゆるく受け止めてくれているのが、長続きの秘訣(ひけつ)かも」と分析する。

 一方で懸念もある。「利用者を労働力と勘違いされては困る。あくまでも体験の場だ」と強調。賃金が発生しないことから、事業者が安い労働力とはき違えて制度を悪用しないよう注意を払う。利用者のフォローも求められるため、人事異動がある市職員の人繰りも課題だ。

 昨年4月現在で市内の生活保護受給者は約5400人。うち、50人程度が就労体験の対象者と見込む。生活に困窮する家庭の子どもが働く機会を逸し、同様に困窮に陥る「負の連鎖」が暗い影を落としている。

 高齢者介護などに携わる「太陽の家」では、生活保護受給者の60代男性が就労体験している。石渡庸介理事長は「年齢的にマッチしないから雇用しないというのでは、超高齢社会ではもったいない」と嘆く。若者だけでなく生活に困窮する高齢世代の働き口も社会で用意する必要性を感じている。


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