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戦争の影、子ども守れ 児童文学作家、安保法案に懸念

政治行政 神奈川新聞  2015年06月04日 03:00

政府が整備を進める新たな安保法制に異を唱える丘さん=相模原市緑区
政府が整備を進める新たな安保法制に異を唱える丘さん=相模原市緑区

 新たな安全保障法制の議論に、懸念のまなざしを向ける児童文学作家が県内にいる。日本児童文学者協会理事長を務める丘修三さん(74)=相模原市緑区。集団的自衛権の行使が現実となれば、前線に送られるのは誰か。その想像が老作家を奮い立たせる。

 相模湖の湖畔、緑に抱かれた旧藤野町の自宅。丘さんは努めて穏やかな口調で切り出した。

 「多くの子どもが悲しむ世の中に変えてはいけない」

 作家になる以前は養護学校教師として25年間勤め上げた。子どもたちのために書いた劇遊びの脚本は、今につながる創作活動の遠い原点といえる。子どもこそ、守るべき存在。その視点からは、「新たな安全保障法制は、戦禍を再び近づけるように感じる。子どもたちの将来のためにならない」と映る。

 日本が輸入する原油の大半が通る中東・ホルムズ海峡が閉鎖された場合、集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」にあたる可能性がある。今国会でそうした認識を示した安倍晋三首相に、異を唱える。「海峡を閉ざされないような外交のあり方を考えることが、まず先ではないか」

 教師時代、普通学校に併設された障害児学級を担任したことがあった。珍しい遊具が多いその学級に、健常の児童たちが休み時間に訪れた。

 「いざ障害のある子どもと向き合うと、偏見や誤解から一線を引いてしまう。けれども、子どもたちは変わっていける。次第に認識し合い、近づいていき、1年もたてば手をつなげられるようになる」

 教室の片隅で生まれる理解や歩み寄りの瞬間を多く知るからこそ、推進派の議論は「見えない脅威をことさら強調し、暴力を連想させ、国民をいたずらに怖がらせる」として共感しない。

 「あの子は暴力を振るうかもしれない。だからそれに備えて、抵抗する武器を持っていてもいいよとは教えない」。考えたいのは「あの子」の気持ちを思う想像力の働かせ方と、いつか手をつなぐための方策だ。

 子どもたちに伝えたいメッセージを、ある自著の巻頭に記した。

 〈長い道のりを 歩いてきたお年寄りは 人生のバトンを きみたちに渡して 去っていくのだ 生きる喜び、悲しみ 身につけた知恵 そして 人へのやさしさにみちた バトンを〉

 丘さんは言う。「追い求めるべきは、子どもたちが気持ちよく本を広げ、熱中して読むことができる世の中だ」と。それは、この国で戦後70年近く、大人から子どもへと渡ってきたバトンそのものだ、と考えている。


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