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観光規制改革<中> 訪日客、政治主導の緩和奏功

政治行政 神奈川新聞  2015年05月28日 09:37

アジア諸国からの団体客でにぎわう新横浜ラーメン博物館=4月、横浜市港北区
アジア諸国からの団体客でにぎわう新横浜ラーメン博物館=4月、横浜市港北区

 4月、新横浜ラーメン博物館(横浜市港北区)。マレーシアから訪れた旅行者が、旅行サイトに感想を書き込んだ。

 「ツアーの目的地の一つだったけど、入ってみて驚いた。ビルの中に、古い日本が再現されている」

 外国人旅行者にとって、「ラー博」は横浜見物の定番。週末には100人規模のグループが訪れることもある。

 日本政府観光局(JNTO)の発表によると、今年4月の訪日外国人客数(推計値)は176万4千人。3カ月連続で単月の過去最高記録を更新した。アジア諸国の訪日客向けに、査証(ビザ)の発給要件が2013年7月から順次緩和されてきたことが大きな要因だ。昨年のビザ発給数は前年から54・1%増の287万件に達している。

 緩和実現に辣腕(らつわん)を振るった菅義偉官房長官(衆院2区)は「これほど効果があるとは思わなかった」と振り返る。

 ビザ緩和は、「観光立国」を目指す政府の成長戦略の一環として観光庁が要求していたが、治安悪化への懸念を理由に警察庁が難色を示していた。

 「入国を水際で止めていれば治安がいいのは当たり前じゃないか」。関係省庁担当者の説明に反論した菅氏は、外相や国家公安委員長などの関係閣僚を集めて「協力してほしい」と要請。発給要件の大幅緩和は結果的に、わずか「10分程度で決まった」という。

 昨年10月から外国人向けの消費税免税販売を広げた制度も、中国人客の“爆買い”をはじめとする訪日客の増加をもたらした。対象を電化製品などから、地域の産品や化粧品などの消耗品にも広げている。訪日外国人の消費が貢献し、14年度の旅行収支は55年ぶりに黒字となった。

 菅氏や財務省などと協議を重ね、13年末の税制改正要望に盛り込んだ坂井学・前国土交通政務官(衆院5区)は「観光の目的に『買い物』を入れられないか、抜本的な制度改革を試行してみた」。外国のクルーズ客船が接岸した埠頭(ふとう)に臨時の免税販売テントを出す際の手続き簡素化も導入された。

 政治主導の力業で実現させた規制緩和だが、訪日客の急増は金融緩和による円安の進行に支えられてきた面もある。再び円高局面に入れば、日本への客足が鈍る可能性は否めない。

 浜銀総合研究所の新滝健一主任研究員は指摘する。「これまでの円高対策は、輸出企業への影響で考えられていたが、今後は外国人客が押し上げている地方消費への影響など新たな視点が必要になるだろう」。為替動向に左右されない訪日リピーターをつかむ努力が試されそうだ。


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