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神奈川のリスク浮き彫りに
どこまで備えるか 県の新たな被害想定 

社会 神奈川新聞  2015年05月28日 03:00

主な地震の市町村別想定死者数
主な地震の市町村別想定死者数

 11もの地震を対象とした県の新たな被害想定は「地震の巣」と形容される首都圏の中でも際立つ神奈川の災害リスクをあらためて浮き彫りにした。全域に被害を及ぼす海溝型の巨大地震や足元から激しい揺れをもたらす直下地震は「いつどこで起きてもおかしくない」(県災害対策課)。古い木造住宅の倒壊や延焼火災、海から押し寄せる津波、宅地の背後に迫る崖地の崩落…。描かれた複合的な被害にどこまで備えるかという難しい課題を突き付けている。

 「高い津波を対策の前提にすると、まち全体の移転や10メートルぐらいのかさ上げが必要だが、実現不可能な目標は立てられない」。県地震被害想定調査委員会の委員長を務めた吉井博明・東京経済大名誉教授は指摘する。「今後10年ぐらいを念頭に達成可能な取り組みを進めるべきだ」

 新たに想定した11地震のうち、津波の被害が激しい慶長型など5地震が参考扱いとされたのは、過去の事例や将来の発生可能性が不明であることに加え、あまりに甚大な被害が予想されたことも影響している。

 中でも最悪の被害内容となった相模トラフの最大級の地震では、想定される死者数が14万人を超えた。津波による死者だけで11万3900人余りと、1923年の関東大震災時の東京を含めた犠牲者全体(約10万5千人)をも上回り、このうち横須賀市のみで4万7500人以上が死亡するという厳しい試算になっている。

 この最大級と同じタイプの海溝型で、規模がやや小さい大正型関東地震は、対策の対象となる6地震の一つ。それでも2009年の前回想定から死者数が4倍近くに増えた。

 同地震のベースとなった関東大震災の建物被害に関する研究成果を考慮した結果、当時の揺れがさらに激しかったことが分かったためで、災害対策課は「今回の想定の方が当時の実態を反映している」と説明する。家を失う人が極めて多くなるため、発生直後の避難者数は374万人余りと県の人口の4割に達し、1カ月後でも279万人が避難を続けるという深刻な事態も見込んでいる。

 一方、東日本大震災を受けて国が想定を見直した南海トラフ地震や首都直下地震(都心南部直下地震)については、これまで公表されていた県全体の被害や死者数と別に、市町村別の独自試算が示された。南海トラフ地震の想定死者(1740人)のうち98%は津波が原因。死者2990人とされた都心南部直下は、これとは別に延焼火災で逃げ場を失う「逃げ惑い」で650~2660人が亡くなると予想している。


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