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  3. 河村隆一「全てをあらわに」

神奈川新聞  2004年06月06日公開  

河村隆一。6月に東京・六本木で始まる舞台「銀河英雄伝説 星々の軌跡」に主演する
河村隆一。6月に東京・六本木で始まる舞台「銀河英雄伝説 星々の軌跡」に主演する

 「本気で生きるって結構疲れるね。でも人生本気で生きる瞬間ってそんなに来ない。だからみんなの前にいるとき、この5人はとっても幸せなんだ。マグマからわき出るようなグルーブを探している。魂で抱き合おう」。--2015年2月8日、地元・神奈川県民ホールで約19年ぶりに行ったロックバンド「LUNA SEA」のライブでボーカルのRYUICHI(45)は叫んだ。

 2014年5月29日、バンドは結成25年を迎えた。同年6月から今年3月14日まで全国各地でコンサートを実施。「オレたち出会ってから25年も経ったけど、気持ちはあの時のまんま。絶対1番になれるって。あの時のエネルギーは周りに全く理解されなかった。でもこうやって5人でステージに立つと、昨日のことのようにあの燃えさかる気持ちを思い出す」。10年間の活動休止期間を経た、約14年ぶりのホールツアー。変わらず出迎えてくれたファンと5人の時間は一瞬で巻き戻った。デビュー前の曲に過去のにおいはなく、経験を積んだ40代の身体が放つ音は“進化”にあふれていた。築いた音楽の中に、燃える炎を感じた。「1回メラメラすると、どこまでも火がついて記憶がなくなってしまうステージもあった」。共振した2500人が拳を振り上げ応える。ステージを、客席をまばゆい光りが包み込み、会場を一つにした。


 第2の故郷と親しむ大阪での公演を終えた後、5人はソロの制作現場へと向かう。RYUICHIは、河村隆一として6月10日から21日まで「Zepp ブルーシアター六本木」(東京都港区)で上演される特別公演「銀河英雄伝説 星々の軌跡」に主演する。1500年後の未来を舞台に、独裁政権「銀河帝国」と民主主義を掲げる「自由惑星同盟」が150年もの間、続けている宇宙戦争を描いた物語で、河村は天才指揮官ヤン・ウェンリーに扮し自由惑星同盟を率いている。

 六本木で幕を開ける舞台は、「第一章 銀河帝国篇」(2011年)から、「第四章 後篇 激突」(2014年)まで10作品を上演し累計15万人を動員した長編作をまとめたもの。河村が演じるヤンは先見の明を持ち、難攻不落と言われる要塞(ようさい)を陥落し、「不敗の魔術師」とたたえられた戦術家。河村は「僕とヤンは、ひょうひょうとしているところが似ている。けれど、僕はアクセルしかない人間で、ヤンのような冷静さは持っていないんですよね。バーンアウト(燃え尽き症候群)しそうと思うぐらい常に燃えている、激情型。舞台は医者、弁護士とか題目を与えられて、自分と違う人生を演じることができるでしょう。歩まなかった道を歩むことは刺激になる。逆に音楽は僕の人生そのものなんです」。


 「人生そのもの」。

 1989年5月。東京・町田にあるライブハウス「町田プレイハウス」でギター・バイオリンのSUGIZO、ギターのINORAN、ベースのJ、ドラムの真矢と出会い、自分たちの宇宙を追究してきた。バンドブームだった当時、「デビューさせてやるよ」という甘い誘いはいくつもあったが、「自分たちの道筋は、自分たちで描く」と耳をかさなかった。複数のバンドと入れ替えでステージに立つ「対バンライブ」では、ほかのバンドのファンをどうやって、自分たちのファンにするのか命がけで考えた。髪を緑色に染めたり、両眉をそった奇抜な見た目は、ステージの上に立つ人間としてのこだわりだった。「デビューが決まったときには、日本武道館に立つ5人の姿が見えていた」と語る。

 「ボーカリストにとって身体は楽器。歌うときは、全て脱いでいるんです。裸なの。ライブ中は歌うことに陶酔しているから、なにか動物的なものが出ていると思うんですよね。むき出しの魂を出すために、自分をぎりぎりまで追い詰めて、研ぎ澄まして、自分の何もかもを削っていくんです。もっと脱ぎまくって、全てをあらわにしたら、無敵になれると思うから」。


 歌、演技、ゴルフ、車のレース。どんなことも、常にアクセルは全開。車体を壁にこすり、塗料がはがれ、へこんでボロボロになっても、まだなお、攻め続けるのが信条だ。

 「いま45歳。ずっと王子様キャラでいるけれど、いまは王子を卒業してキングになることを考えているんです。どう老けていくのか。ポール・マッカートニーみたいに、しわも『渋い』と言ってもらえるようになれればいいし、貫禄っていう意味で体重だって増えてもいいのかもしれない。持っているものを守るのではなくて、常に変わり続けたいんです。生物学でいう変態ね。変態し続けたい。理想の声、“最終の色”が何なのか、それを手に入れるために、進化をし続けたいんです」。

 マイクなしで歌うステージでは、全身を震わせ歌う力を身につけた。俳優として培った演技力は、言葉を強くする表現力に変わった。ゴルフのコースを回ったり車のレースに出場した経験は、己と戦い続ける精神力を養うことに繋がるだろう。生きて経験したこと、喜怒哀楽も全て音楽に落とし込まれている。

 6月の舞台では、過去の作品を観た人も、初めての人もどちらも楽しめるような仕掛けをスタッフらと考えている。6月21日の閉幕後、27・28日には、結成25周年の締めくくりとしてバンド初の主催公演「LUNATIC FEST.」を「幕張メッセ」(千葉県美浜区)で、先輩バンド「X JAPAN」、後輩バンド「SIAM SHADE」らを集め大お祭り大会を開く。河村は「いま見ているのはてっぺん。でも誰かが登ったてっぺんじゃなくて、誰も登っていないてっぺん。ファンのみんなが信じてくれる分だけ、オレたちは大きくなれるから」。

 自らが定めた、自らを越えるために。進化は、止まない。【西村綾乃】

 かわむら・りゅういち。1970年5月20日、神奈川県大和市生まれ。秦野市や伊勢原市出身のメンバーと組んだロックバンド「LUNA SEA」のボーカリストとして1992年5月、アルバム「IMAGE」でメジャーデビュー。1997年2月、シングル「I love you」でソロ始動した。2枚目のソロアルバム「Love」は男性ソロシンガーとして歴代最高位となる約300万枚の売り上げを記録。1位の座を保持し続けている。また2011年に東京・日本武道館で行ったソロ公演では、約6時間半で100曲以上を歌唱し、ギネス記録を達成している。俳優・小説家・プロデューサー・レーサーなど活動の幅は広く、また「かながわ観光親善大使」も務めている。


河村隆一。6月に東京・六本木で始まる舞台「銀河英雄伝説 星々の軌跡」に主演する
河村隆一。6月に東京・六本木で始まる舞台「銀河英雄伝説 星々の軌跡」に主演する







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