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イルカ繁殖「全水族館で協力を」 新江ノ島水族館

社会 神奈川新聞  2015年05月23日 03:00

繁殖中のイルカの世話をする飼育員=21日、藤沢市の新江ノ島水族館
繁殖中のイルカの世話をする飼育員=21日、藤沢市の新江ノ島水族館

 世界動物園水族館協会への残留と引き換えに、日本動物園水族館協会がイルカの調達方法を漁から繁殖へ転換する方針を決めた。ただ、全国レベルでの繁殖推進には課題も少なくない。旧江の島水族館時代に国内で初めてバンドウイルカの繁殖に成功した新江ノ島水族館(藤沢市)は、水族館の間での調整が不可欠と提言している。



 同館で飼育するバンドウイルカは現在計10頭。3頭は静岡と長崎から野生で搬入され、残りの7頭は館内で繁殖したという。

 1959年に国内初の繁殖に成功し、これまで100以上の出産例がある。この1年で2頭の子イルカが相次いで誕生したばかりだ。当初は1割未満だった1年後生存率も、近年では7割超になるなど、ノウハウを受け継いできた。

 飼育歴28年の海獣類チームリーダーの奥山康治さんは、繁殖を重視する理由を「次世代に命をつなげる大切さを伝えようという理念でやってきた」と語る。

 98年を最後に、和歌山県太地町とのバンドウイルカの取引はしていない。今回の日本協会の方針転換を、奥山さんは「個々の水族館でやっていたものを、協会を通じて日本全体でやっていこうということとプラスに捉えている」。一方、繁殖に調達を絞れる可能性については「全水族館がうまく協力し、調整しないと難しい」と懸念もする。

 遺伝の多様性を確保するため、繁殖には水族館同士でイルカを移動させる必要がある。だが、時間をかけて芸を仕込んだ“花形イルカ”であれば、興業面から貸し出しは難しくなる。イルカは独り立ちまで3年前後を要し、その間は母親が付きっきりで子どもの面倒を見る。飼育頭数の少ない小規模館では1頭を繁殖に回す余力に乏しいのも現実だ。

 「展示がメーンの動物園とは違い、水族館のイルカはショーを見せる形でやっている。集客がないと餌代も払えない。まずは経営を守ることが最優先」。こうした現状を踏まえ、奥山さんは「貸し出し態勢の整備やルールづくり、血統管理などで今まで以上に協会の調整が必要。(海外に多い)人工授精も考えなければならない」と指摘する。

 陸上動物と違って飼育の難易度も格段に上がる。繁殖用プールの設置など、新たな設備投資が必要な場合もある。同館はこれまでも繁殖したイルカを他館に譲渡するなど、着実に実績を残してきた。

 繁殖の草分けとしての使命を奥山さんは語る。「協会の方から要請があれば技術的な協力や助言は惜しまない。水族館の仲間たち全体の問題として、できる限りのことはしたい」


●県内2施設、繁殖に今後も注力

 日本協会に加盟しイルカ・鯨類を飼育している県内の水族館は、新江ノ島水族館のほか、横浜・八景島シーパラダイス(横浜市金沢区)と京急油壺マリンパーク(三浦市)の2施設。両館とも以前から繁殖に取り組んでおり、今後も注力する方針だ。

 八景島はイルカ・鯨類33頭を飼育。約半数が太地町から来た個体という。1993年の開園時から繁殖にも取り組み、最近5年間では2頭が誕生、無事成長した。広報担当者は「協会の決定には従う。数年前から計画的に繁殖に取り組んでいる」。

 油壺は10頭のバンドウイルカを飼育している。繁殖では過去に3頭の出産例はあるが、いずれも生後1年以内に死んだ。広報担当者は「(今回の決定とは関係なく)改善に努め、繁殖していきたい」としている。


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