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御嶽教訓に迅速対応 箱根町、3月に指針作成

社会 神奈川新聞  2015年05月08日 03:00

勢いよく噴煙を上げる様子が確認できた大涌谷周辺=7日午後5時ごろ、箱根町仙石原
勢いよく噴煙を上げる様子が確認できた大涌谷周辺=7日午後5時ごろ、箱根町仙石原

 県内唯一の活火山、箱根山(箱根町)で噴火警戒レベルが初めて2(火口周辺規制)に引き上げられた。火山性地震は箱根山ではよく起きる現象で数カ月に及ぶ場合もあるが、気象庁は活発化してから10日で「小規模な噴火の可能性がある」と踏み込み、箱根町もすぐに規制を敷いた。迅速な対応の背景には、警戒情報が不十分だったと指摘された昨年9月の御嶽山噴火の苦い経験がある。だが、その教訓を生かす対策の見直しは緒に就いたばかりで、なお課題はある。

 観光スポットとして人気の大涌谷噴煙地。火山活動が活発になったものの警戒レベルの引き上げには至らなかった4日から、箱根町は周辺遊歩道やハイキングコースの規制に踏み切った。6日に気象庁が警戒レベルを引き上げた30分後には、立ち入り禁止の範囲を拡大している。

 こうした対応の根拠となったのは、御嶽山の教訓も踏まえて3月にまとめた大涌谷周辺の観光客の避難誘導マニュアル。噴火警戒レベルなどに応じて町や県、周辺施設が取るべき対応を定めており、両日の規制はこれに沿ったものだった。

 町の防災担当者は言う。「マニュアルに基づいた避難訓練は今夏の予定で、中身の検証すらできていなかった。でも、マニュアルがあったことで迅速に対応できたのではないか」

 気象庁も素早かった。現地調査のため、機動観測班を大涌谷に連日派遣し、県温泉地学研究所の研究員らとともにレベル引き上げに該当する現象を探った。

 5日午後9時すぎに箱根山で起きた有感地震の震源がこれまでと異なる深さだったことに着目。「火山活動のステージが変わった」といち早く判断し、6日午前6時に警戒レベルを引き上げた。これにより箱根町は観光客がほぼいない早朝に規制を拡大することができ、対象区域からの避難をめぐる混乱は起きなかった。



 しかし、避難マニュアルは大涌谷に滞在する観光客や施設従業員、登山客が対象。周辺住民に影響が及ぶ事態まで想定しておらず、その避難計画作りは積み残されている。ある町職員は不安を口にする。「事態が切迫し、警戒レベルがさらに引き上げられたら、今回のように対応できるかどうか。何しろ初めての経験ばかりだ」

 2001年には4カ月以上に及ぶ大規模な群発地震が起きたが、噴火には至っていない。この時の火山活動は噴火警戒レベル2に相当するものの、当時はまだ対応の基準となる警戒レベルの運用は始まっていなかった。

 その後も群発地震は数年に1度程度は発生し、山体の膨張などを伴うケースもあったが、箱根山と同じ警戒レベル2でロープウエーが昨夏から運休している阿蘇山(熊本県)や活発な噴火活動が続くレベル3(入山規制)の桜島(鹿児島県)のようには、噴火のリスクはこれまで現実味を帯びてこなかった。

 気象庁が箱根山で起き得るとみているのは、御嶽山同様の「水蒸気噴火」。温地研とともに想定火口周辺などの観測網を今後強化するが、発生予測は極めて難しいとされている。

 観光客らの間に不安の声が出ているが、全国の活火山に詳しい神沼克伊・国立極地研究所名誉教授は「今回の火山活動は定常的な異常現象で、過去に経験した範囲内と言えるのではないか。安全だとは誰も言えず注意は必要だが、過剰に反応するのではなく、正確な情報に基づき正しい判断、行動をすべきだ」と指摘する。


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