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時代の正体〈89〉日本会議を追う(上)改憲へ増す影響力

時代の正体 神奈川新聞  2015年05月04日 13:24

日本会議の動向を解説する俵さん=東京都千代田区
日本会議の動向を解説する俵さん=東京都千代田区

◇改憲へ増す影響力
 施行68年を迎えた憲法が岐路に立つ。背景に目を凝らすと、ある保守系団体の存在が浮かび上がってくる。「日本会議」。全国3万8千人の会員を擁し、議員連盟には安倍内閣の19閣僚中15人が名を連ねる。掲げる主張は皇室への敬愛と新憲法制定。政治への影響力を増しながら「日本最大の右派組織」が憲法改正に向け、働き掛けを強めている。

 東京都目黒区の日本会議本部に取材を申し込むとファクスで質問状の提出を求められた。

 回答はその日のうちにあった。組織についての記述が、特徴の一つである政治との太いパイプを物語る。

 〈日本会議と連携する議員集団には「日本会議国会議員懇談会」(平沼赳夫会長)と、「日本会議地方議員連盟」(松田良昭会長・神奈川県議会議員)があり、複数の政党の議員が、党派の垣根を越えて政策の実現のため活動しています〉

 前者の国会議員懇談会(日本会議議連)には自民党、民主党、次世代の党、維新の党などから280人が加盟している。衆参両院議員717人の約4割に当たる数だ。

 保守系宗教団体などでつくる「日本を守る会」と保守系文化人、旧日本軍関係者を中心とした「日本を守る国民会議」を統合して日本会議となったのは1997年。発足から18年、「日本最大の右派団体」と称されるのは政界への影響力の大きさゆえである。

 2007年、設立10周年大会での元最高裁判所長官、三好達会長(当時)のあいさつがホームページに残る。

 〈主要なものだけを取り上げましても、国旗国歌法の制定に向けて国民運動を展開してその成立に大きく寄与し、家庭の大切さへの想いや家族の一体感を希薄ならしめるおそれがある夫婦別姓を容認する制度の導入を阻止し、我が国の主権に関わる大問題であります外国人地方参政権制度の導入を阻止して参りました〉

 〈わけても、強調したいのは、昨年暮の教育基本法の改正であります。日本会議は何としてでも、戦後教育に終止符を打たせなければならないと、長年にわたり教育基本法の改正をはじめとする教育改革に、その運動の重点をおいてきました〉


■「内閣」
 そもそも、なぜ憲法改正なのか。

 〈現行憲法制定以来70年近くたちましたが、『前文』『天皇』『9条安全保障』『環境(新設)』『家族保護(同)』『緊急事態(同)』『96条(改正手続き)』など時代にそぐわない条文や、現代的な課題など改正の必要があると考えます〉

 ファクスの回答にある「環境」や「緊急事態」が目を引く。世論に慎重論が根強い9条改正を後回しにして、合意が得られやすいと踏む項目から手を付けようという「お試し改憲論」。来夏の参院選を経た後の憲法改正発議を見据え、昨今、安倍政権でささやかれる現実路線である。

 もちろん9条改正が必要との主張は揺るがない。

 〈今国会で審議される安全保障法制の整備は、現行憲法9条の解釈変更可能な範囲で法整備されるもので、当然憲法上の制約を受けています。集団的自衛権などが個別法で認められるようになっても、自衛隊が軍隊ではないという課題は解決されず、9条改正の必要があります〉

 こうした姿勢は自民党の憲法改正草案の中核部分に重なる。さらに現閣僚19人のうち議員連盟メンバーは15人。第1次安倍内閣、麻生内閣では9人、改造前の第2次安倍内閣では13人だったが、ついに8割を占めるまでになった。

 「つまり日本会議内閣ということ」。日本会議の動向を追い続ける「子どもと教科書全国ネット21」事務局長の俵義文さんはそう言い切る。

 「だから安倍首相は日本会議を無視できない。歴史認識について『村山談話を全体として継承する』と言いながら謝罪を避け、靖国神社に参拝した。欧米から批判されながらも日本会議の主張に配慮しなければならないと考えるのだろう」。憲法改正への歩みも止まらないと踏む。


■高揚感
 日本会議の広報担当者はくぎを刺すように「あくまで自民党は自民党。日本会議は日本会議です」と、共同歩調をやんわりと否定してみせる。

 政治の側は高揚感を隠せない。三好前会長ら日本会議メンバーが共同代表を務め、14年10月に発足した「美しい日本の憲法をつくる国民の会」。設立総会で衛藤晟一首相補佐官があいさつに立った。

 〈いよいよ憲法改正に向かって最後のスイッチが押される時がきた。自民党は結党以来、憲法改正を旗印にしてきた〉

 〈1993年に自民党が政権を失った時、自民党綱領だった自主憲法制定を外すべきではないかとの提案がされたが、安倍首相やわれわれが「憲法改正を下ろすなら自民党なんていうのはやめるべきだ」などと議論をした。今、その時のメンバーが中心となって第2次安倍内閣をつくった。安倍内閣は、憲法改正の最終目標のために、みんなの力を得て成立させたと言っても過言ではない〉

 みんな、とは誰を意図しているのか。

 国民の会は「憲法改正を実現する1000万人ネットワーク」と銘打ち、近く全国で署名集めを始める。「美しい日本を子供たちへ」とうたわれたチラシに記された活動内容にはこうある

 〈憲法改正の早期実現を求める国会議員署名及び地方議会決議運動を推進する〉

 〈全国47都道府県に『県民の会』組織を設立し、改正世論を喚起する広範な啓発活動を推進する〉

 強調される地方。日本会議の回答によれば、全国の都道府県、市町村議員でつくる地方議員連盟には約1700人が加盟しており、統一地方選の結果は現在集計中だという。


【日本会議議連の閣僚メンバー】
総理 安倍晋三
副総理 麻生太郎
総務相 高市早苗
外務相 岸田文雄
文部科学相 下村博文
厚生労働相 塩崎恭久
環境相 望月義夫
防衛相 中谷元
復興相 竹下亘
国家公安委員長 山谷えり子
地方創生担当相 石破茂
沖縄北方担当相 山口俊一
経済再生担当相 甘利明
女性活躍担当相 有村治子
官房長官 菅義偉

【日本会議の活動】
1997年5月 「日本を守る国民会議」と「日本を守る会」が統合して設立。11月に「日本会議中央大会」を開催、憲法、防衛、教育問題を訴える。
98年4月 道徳教育の推進、国旗国歌法制化を目指し国会論議を展開。
99年5月 国旗国歌の法制化について国会論議を展開。国旗国歌法は8月に成立。
2000年3月 教育改革を推進するため「日本教育会議」を設立。
01年6月 「小泉首相の靖国神社参拝を支持する国民の会」を結成し、参拝実現にむけた国民運動を展開。「国民の会」と「国会議員有志の会」が首相に参拝を要請。小泉首相は8月13日に参拝。
02年5月 日本会議国会議員懇談会総会で国立追悼施設建設反対を決議。
03年1月 「日本の教育改革有識者懇談会」設立。
04年1月 政府は国立追悼施設の建設の見送りを決定。
05年7月 終戦60年に当たり靖国神社20万参拝運動を提唱。この夏、靖国神社に20万5千人が参拝。
06年3月 皇室の伝統を守る1万人大会開催。「皇室の伝統を守る国民の会」設立。
07年10月 日本会議地方議員連盟設立総会。
08年2月 学習指導要領改訂案に対し「16項目の改善要求」
09年   外国人参政権反対キャンペーン開始。
10年4月 外国人参政権に反対する1万人集会。
11月 尖閣諸島を守る全国国民集会。
12年3月 尖閣を守れ!領海警備の強化を求める国民集会
13年11月 憲法改正の実現へ!日本会議全国代表者大会
14年7月 「集団的自衛権の行使容認に関する見解」を発表。
10月 「美しい日本の憲法をつくる国民の会」設立。


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