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首長現職全勝も…数字から見る「信任度」

社会 神奈川新聞  2015年04月28日 10:35

 第18回統一地方選のすべての選挙結果が確定し、知事選の告示から1カ月にわたる舌戦が幕を下ろした。前・後半戦とも盛り上がりに欠け政策論争は深まらず、それを裏付けるように投票率は低迷した。首長選はすべて現職が再選を決めたものの、全有権者に占める得票の割合を示す「絶対得票率」はいずれも4割に満たなかった。今後4年間の自治体運営に「民意の後ろ盾」は得られたのか-。当選者の“信任度”を探った。

 「民主主義の原点は、やはり選挙に行くこと。今後も皆さんの関心を集めていくため、さまざまな施策をやっていきたい」。黒岩祐治知事は2期目の就任会見で、219万超の得票数を「圧倒的な支援」と表現した。一方で、過去最低を記録した投票率を憂え、対話集会などで県民の声に向き合っていく考えを示した。

 黒岩知事の得票数は歴代3位を記録し、一騎打ちということもあって得票率は76・7%に上った。ただ、当日の有権者数(730万4530人)に占める得票数の割合「絶対得票率」は30・1%。前回(24・0%)から約6ポイント伸ばしたものの、有権者の7割は不支持か態度不明とした形だ。


 統一選後半戦で行われた首長選でも、似たような傾向が見て取れる。いずれの首長も絶対得票率の数値を「低い」「現実として受け止める」とした上で、選挙結果を踏まえて市民意見に耳を傾ける意向を示した。

 最も高い37・1%だった開成町の府川裕一氏は、「常に51%(過半数)の支持を得られるよう努力している」。南足柄市の加藤修平氏(33・1%)も過半数の支持を目指す。今後も現場に出向いて聞いた市民意見を行政運営に反映させる方針だ。

 一方、前回より絶対得票率を伸ばしたものの30%に届かなかったのは、与野党相乗りの構図で新人を破った首長だ。自民、民主、公明の3党が推薦した平塚市の落合克宏氏は27・9%。同じ政党が相乗りした茅ケ崎市の服部信明氏は23・1%だった。

 落合氏は「組織戦で、投票に行っても変わらないと思った人もいるかもしれない」と投票率が過去最低となった要因を分析。その上で絶対得票率は「低い」と認める。それでも「多くの人から支持をもらい、『施策はしっかり進めていけ』という意思をもらった」と受け止めた。

 服部氏は、必ずしも政党相乗りが低投票率を招いたとの立場は取らない。「住民の合意形成のプロセスがうまくいっているから政党が相乗りできるのでは」とメリットを主張する。今後、投票率や絶対得票率を上げていくためには「情報発信する政治家の責任もある」とともに「住民側もお任せ政治でなく情報を得ようとする取り組みが重要」と強調した。

 絶対得票率が最も低かった大和市の大木哲氏(20・3%)は「現実を受け止め、頑張っていくしかない」と述べるにとどめた。

社会変える政治参加を 河村和徳・東北大准教授



 統一地方選の投票率が過去最低を記録するなど低迷した。最も身近な選挙でありながら有権者の関心が高まらない現状は、「地方自治は民主主義の学校」という教訓と懸け離れている。

 投票率の低下に伴い、首長の絶対得票率も下がる傾向にある。少なくとも50%ないと「民意を背負っている」とは言い難く、痛みを伴う改革は難しい。50%に満たない当選者は、リーダーとしての正当性に欠けているという謙虚な姿勢を持つべきだ。就任後は有権者の声を丁寧に拾い、議会や住民にきちんと説明する必要がある。

 特にリコール請求権(有権者の3分の1以上)さえ満たしていない当選者が、賛否が割れるような施策を実現したいのなら、住民投票などで選挙結果を補完する必要がある。首長と住民の意識のズレが、選挙結果では分からないからだ。欠けた正当性を、直接民主主義でフォローしていかなければならない。

 絶対得票率の問題は、与野党相乗りの構造も突き詰めて考えていく必要がある。相乗りは政治家の都合でしかない。受け皿を示せない政党や議会は、二元代表制の上で落第点。選挙で選択肢を示さないと政治に対する信頼感を失わせてしまう。

 多数の民意を得ることが民主主義の原点。八方美人は名首長にはなり得ない。平時には見えない部分もあるが、災害など危機発生時の対応や震災復興はまさにリーダーシップで差がつく。誰がやっても同じではない。

 地方が一枚岩になる時代は終わった。地方創生や都市間競争で首長のリーダーシップが格差を生み、優れた自治体に人が流れていく時代。多様化・細分化するニーズへの対応がリーダーに求められているからこそ、地方の方向性を住民が監視する必要がある。

 有権者も「あの人は駄目」と棄権するのでは、社会は変わっていかない。良い方向に持っていくには選挙権を放棄せず、またさまざまな機会を通じて自治に参画していかなければならない。思いが反対であればグループをつくってリーダーを出すといった活動をしていく必要がある。神奈川にはその土壌が整っているはずだ。

 政治に無関心すぎると、署名活動をしたいと思ったときに、やり方がわからない-となる。一番簡単な政治参加は署名と選挙。社会を変える「はじめの一歩」として参加することが大切だ。住民が参加してモノが言えるのが民主主義。面倒くさがらずに政治参加してほしい。


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