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保育所確保に課題と可能性 

社会 神奈川新聞  2015年04月26日 09:41

空き家を利用した「風の子保育園」。畳の上で遊ぶ子どもたちの元気な声が響く =葉山町一色
空き家を利用した「風の子保育園」。畳の上で遊ぶ子どもたちの元気な声が響く =葉山町一色

先細り懸念の川崎市


 少子化対策として待機児童の解消に自治体がしのぎを削る中、県内の認可保育所数は2010~14年の5年間で1.3倍に増え、約1300カ所となった。しかし、増加分の8割以上が横浜、川崎市に集中。確保が思うに任せない小規模自治体と保育環境の格差が広がりかねない状況だ。ただ、人口増加が続く中で待機児童ゼロを達成した川崎で将来の先細りが懸念される一方、人口減への対応が必要な葉山町では現状を生かす知恵が芽生え始めており、課題と可能性が交錯している。

 認可保育所が5年間で161カ所から241カ所へと1・5倍に増加し、横浜市をも上回るペースで施設整備が進んだ川崎市。その中でも保育所数が大きく増えた中原区の武蔵小杉駅周辺は、5年前の横須賀線駅開業を機に高層マンションが次々と建ち、保育需要が急増している。

 だが、駅の開業前から変化を見つめてきた「すみれ保育園」の奥村寿之園長(55)は「成長都市」ゆえの課題を口にする。「今後新設しようとしても、これだけ地価が上昇すると採算が厳しくなるし、用地も残されていないのではないか」

 施設の急増は利用する保護者の選択肢を広げたものの、経営する側はいずれ子どもが減少することを念頭に厳しい見通しを立てざるを得ない。「認定こども園への移行や高齢者施設の合築などを選択しなければならなくなるだろう」


 保育所の確保が町の描いたようには進まなかった葉山町では、地元のNPO法人が運営する保育所が一つのヒントになっている。

 認可外の施設として06年に開所した同町一色の「風の子保育園」。ふすまが取り外されて広々とした和室を子どもたちが駆け回り、畳の上におもちゃを広げてはしゃいでいる。

 活用しているのは、築約50年の空き家。生け垣に瓦屋根、玄関の近くには台所があり、「家のような環境で保育を」との方針にぴったりだった。1階で0~5歳児を受け入れ、2階は学童保育として小学生の放課後の居場所を提供する。

 山浦彩子園長(48)が目を細める。「園児にとっては、おじいちゃんやおばあちゃんの家に来たような感じみたい」

 2歳の末っ子を預ける40代の女性も、そんな「風の子」の家庭的な雰囲気を気に入っている。3児の母だが、長男は別の認可保育所に通っていたため、通園の負担から仕事量を減らすなどのやりくりを強いられた経験も持つ。

 女性は思う。「働きたいのに諦めざるを得ない人もいる。子育てと仕事を両立できないのは、やはりおかしなことだ」

 葉山町の保育所は現在、4カ所。30人ほどの待機児童を解消するため、町は12年に認可保育所の事業者公募を行ったが、適地がないといった理由で応募はなく、13年の再公募でも結果は同じだった。

 だが、国の「待機児童解消加速化プラン」で未利用の国有地を使えるようになり、横須賀市の社会福祉法人が名乗りを上げた。

 風の子も、新制度で認められた「小規模保育事業所」として4月に再出発。受け入れられるのは2歳までとなるが、国の補助金も活用しながら事業の安定化を図ることにした。いずれは受け入れ枠を広げ、より多くの家庭を支えるつもりだ。

 こうした動きに歩調を合わせるように、町も建物の新設に頼らない手法を探ろうとしている。「耐震化などクリアすべき課題は多いが、古民家や空き家を生かすことができれば。認可保育所は難しくても、一時預かりや子育て広場のような利用法も検討したい」(子ども育成課)という。


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