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2015かながわ統一地方選
4市長選、数値目標危うく マニフェスト“後退”

政治行政 神奈川新聞  2015年04月25日 09:14

 26日に投開票される平塚、茅ケ崎、大和、南足柄の4市長選で、各候補が掲げる公約に変化が生じている。数値目標などを掲げ事後検証を可能にする「マニフェスト型選挙」を進めるため、ビラの配布も解禁されたが、肝心の数値目標や期限を盛り込まない公約が増えているのだ。財政事情などに明るいはずの現職も同様の傾向で、“後退”を懸念する声も上がっている。

 「『路上喫煙ゼロ』を目指す」「『待機(児童)ゼロ』の実現に向けた取り組み加速」「大手ホテルや企業を誘致すべく努力」…。新人の1人は、計17項目の公約を掲げる。だがそこに、財源の裏付けや期限は明記されていない。

 この新人には、苦い経験がある。2009年の衆院選で、「年31万2千円の子ども手当支給」などマニフェストを大々的にPRして政権交代を成し遂げた民主党の公認として初当選。だが看板政策のほとんどは実現できなかった。

 「国の財政を分からないまま埋蔵金があると思って数値目標を掲げたが、実際はなかった」。この新人はそう振り返り、今回の選挙は同じ轍(てつ)を踏まぬよう慎重な姿勢で臨んでいる。


 他の新人候補も、なかなか数値目標を掲げきれないのが実情だ。ある新人は「時代の変化が激しい」ことを理由に挙げる。「数値などを設定するとマニフェストに縛られて柔軟な対応ができなくなる」

 市の財政状況を把握できない新人ならではの事情もある。新人の1人は「それぞれの施策に必要な金額は調べたが、財源を生み出す手法は断定できない」、別の新人は「当選してからプロジェクトチームをつくって財政的な裏付けを考えたい」としている。

 数値目標を掲げない流れは、現職にも及んでいる。現職の1人は「数値目標はあった方がいい」と話す一方で、出馬表明が2月半ばになったことを理由に「時間がなかった」と釈明。別の現職は「任期中に実現することを前提とし、財源の裏付けはある」と強調する。他の現職は、これまでの実績紹介に紙幅を割き、今後の施策はわずかだ。

 数値目標は掲げなくとも、4市の候補11人のうち9人はビラを作製、街頭演説などで有権者に配布している。作製しない2人のうち、1人は現職だ。「時間がなかった」のが理由で、数値目標は「(当選後に策定される)市の実施計画や総合計画に盛り込むなどして、実際の施策として打ち出す」と話す。

 前半戦でも、黒岩祐治知事が「計画経済的な数値を盛り込むのではなく、機動的にやっていくためにマニフェストとは一線を画した」などと発言、“脱マニフェスト”の姿勢を鮮明にした。

 マニフェスト型選挙の後退にも見えるこうした現状に対し、早稲田大学マニフェスト研究所の中村健事務局長は「有権者が欲している情報として不十分」と批判する。民主党のつまづきに象徴される数値目標が持つ危うさについては、「まずは財政状況をしっかりと確認すること。就任後の変更や撤回は、説明責任を果たせば問題ない」と話す。

 候補者への情報公開を条例で定めるなど制度改革も必要とした上で、中村事務局長はこう訴える。「地域の課題を明らかにし、具体的な政策を提示するという候補者の務めを果たしてほしい。それが争点化、選挙の活発化につながるのだから」

◆マニフェスト 政策本位の選挙を実現するため、政党や候補者が選挙で掲げる公約。事後検証できるよう、財源や期限、数値目標を明確にするのが基本。英国が先駆で、日本では2003年の公職選挙法改正で国政選挙で政党が配布できるようになった。07年改正では首長選でもビラの配布が可能になった。作製費用は各自治体が条例で公費負担にできる。


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