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2015統一地方選
「選挙に行こう!」市民から続々 多様な意見届けて

選挙 神奈川新聞  2015年04月24日 11:39

衆院選を前に東京・渋谷のスクランブル交差点を渡り「選挙に行こう」と呼び掛ける中田さん(手前左)=2014年11月(カメラマンの小野寺宏友さん撮影)
衆院選を前に東京・渋谷のスクランブル交差点を渡り「選挙に行こう」と呼び掛ける中田さん(手前左)=2014年11月(カメラマンの小野寺宏友さん撮影)

 選挙管理委員会でも候補者でもなく「選挙に行こう!」と呼び掛ける市井の人たちがいる。2014年12月の衆院選では戦後最低の投票率を更新。26日に後半戦の投開票を迎える統一地方選でも下落傾向が続くが、「もっとおしゃれに、もっと気軽に」と、あの手この手で関心を持ってもらおうと趣向を凝らす。有権者の半数が棄権する状況に危うさを感じる人は増えている。

 「部活のノリでやったらどうか」。都内のフラワーデザイナー小沢弘邦さん(49)がそんな思いつきで半年前に始めたのが「VOTE部」だ。

 入部方法は至って簡単。「VOTE FOR」と書かれた紙に自分の思いを書き込み、写真を撮る。「#VOTE部」の目印を付け、ツイッターなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)に投稿するだけ。

 VOTE部の「ボート」は、乗ってみんなで漕(こ)ぐボートにも引っ掛け「総選挙であれば投開票にかかる600億円近い部費は、もう税金として払っているんだから」と小沢さんはとんちを利かせる。

 「例えば自分が所属するクラブやサークルの代表を決めるとき、棄権する人はいない。学校の生徒会長でも投票するでしょう。でも国の政治になると、とたんに冷めちゃう。それなら投票を部活にしてみよう、ということ」

 小沢さんは普段、イベント会場やコンサートの舞台、遊園地といった人が集まる場所に花を生ける仕事をしている。冗談めいた話しぶりから一転、思いの丈に話が及ぶと口調はにわかに熱を帯びる。

 「僕の仕事は空間を対象にしている。このまま投票率が下がり続け、多様性を失った余裕のない息苦しい世の中になれば、確実に空間の自由さも奪われていくと思う。僕にとって世の中のありようは、空間と同じなのです」

 「もっと肯定的な言葉で、投票を呼び掛けたい」

 川崎市多摩区の会社員中田絵美さん(35)は「LOVEデモ」と銘打ち、真っ赤なメード服をまといパネルを手に歩く。

 14年12月の衆院選では「VOTE FOR LOVE」と声を上げた。

 愛のために投票を-。

 デモに参加するようになったのは、07年に見た核燃料再処理問題を取り上げたドキュメンタリー映画「六ケ所村ラプソディー」(鎌仲ひとみ監督、06年)がきっかけだった。「自分は何も知らない、ということを知ってショックを受けた」。原発の問題を多くの人に知ってもらおうとデモに参加するようになった。

 東京電力福島第1原発事故もあり、「脱原発」の声の盛り上がりに気持ちも高ぶったが、気付けば限られた人たちが集まっていただけだった。

 顔見知りが集まって声を上げる。それも重要。「でも」と中田さんは言いつなぐ。

 「私にとって今もっとも大きな問題は『どうでもいい』と思っている人のこと。自分一人が何かやっても、何も変わらないと思っている人に分かってもらいたい。一人一人の力が社会を、政治を、国を動かしているんだ、ということ」

 関心のない人へ、どう声を届けるか。思案の末に浮かんだキーワードが愛、LOVEだった。

 人は何のために生きるのか。「それは人それぞれあると思う。でもそれは詰まるところ、何かへの『愛』だろう。何かに愛を込め、そのために声を上げればいい。選挙だって何かへの愛のために一票を投じてもらいたい」

 選挙に行けば店で特典サービスが受けられる-。

 投票後にもらえる証明書を示すと、ドリンク1杯が無料になったり、10%の割引が受けられたりする「未来は僕らの手の中プロジェクト」(みらぼく)。湘南発の取り組みは今年で9年目を迎えた。協力店は全国約200店へと拡大、特典も農作業体験や養豚場の見学など多様化してきた。

 今年3月末、初めて協力店拡大のために動いたのは開成町に住む主婦の下山佳子さん(37)。1歳になる娘をベビーカーに乗せ、地元の店々へ飛び込みで営業をかけていった。半月ほどで十数店舗の賛同を取り付けた。

 下山さんを突き動かしたのは14年12月、衆院選の投票率。戦後最低を更新する52・66%(小選挙区)という数字に愕然(がくぜん)とした。

 「この低投票率をみんなはどう受け止めているのだろう。政治の決定が選挙による結果と果たして言えるのだろうか」

 膨らむ懐疑と不安。でも、ママ友の間で話題にするのは、はばかられる空気があった。年配の女性から「女が政治の話なんかするな」と言われたこともあった。

 政治を気軽に口にできるようにしたい。子どもが日々成長する姿からもその思いを強くした。原発再稼働に安全保障法制の改正、沖縄の基地建設-。「命の尊さに触れて実感した。命以上に大切なものなんてない」

 行きつけでもない飲食店へも飛び込み、みらぼくの趣旨を説明して回った。気付いたのは想像以上の関心の高さだった。

 「『選挙行った? 投票証明書でお得な割引があるらしいよ』と、みらぼくを会話のきっかけに使ってもらいたい。それがスタートになると思う」

 子どもが生まれ、生活と政治がつながっていると実感するようになったという下山さん。選挙で何を選ぶかは確かに未来とつながっていて、それはまた子どもの将来と重なって映る。

 「家を一歩出れば、人はいろいろな立場や環境、家族、文化、経済状態の中で生き、さまざまな問題に直面している。そこに決まり切った正解などない。投票率が低いということは、多様な人の意見が政治に取り入れられないということで、それがいいこととは思えない。争点がないなら自分で考えて一票を投じるしかない。一人の市民が意思を表明できるのは投票と、あとは買い物くらいしかないのだから」


VOTE部のホームページには部員たちがパネルを持って投票を呼び掛ける写真が掲載されている
VOTE部のホームページには部員たちがパネルを持って投票を呼び掛ける写真が掲載されている


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