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さよなら三崎の体育館 三浦市、人口流出・老朽化で解体

社会 神奈川新聞  2015年04月18日 11:00

閉館直前の体育館で汗を流す卓球クラブのメンバー=3月31日、三浦市城山町
閉館直前の体育館で汗を流す卓球クラブのメンバー=3月31日、三浦市城山町

 三浦半島先端の三浦市・三崎地区で、半世紀余り住民に親しまれてきた市の体育館が3月いっぱいで役目を終え、解体されることになった。かねて老朽化が進み利用者も減る中、厳しい財政事情から改修や建て替えの費用を確保できない市が維持をあきらめたためだ。高度成長期を中心にマグロ漁の基地として栄えた三崎地区は駅から遠く、人口減少が著しい。市役所も置かれているが、吉田英男市長は利便性の高い地域への移転を視野に検討を始めた。市の中心部が人口流出にあえぐ姿は、3年後にも人口減に転じる神奈川の未来図ともいえそうだ。

 3月31日、同市城山町の市体育館。この場所で最後の練習に臨んだ市家庭婦人卓球クラブの宮本糸路会長(72)が舞台上にそっと花束を置いた。「今までありがとうの気持ちを込めて」。約40年間、活動の拠点にしてきた「ホームグラウンド」に別れを告げた。

 1959年に建築された体育館の廃止が決まったのは、昨年10月だった。理由は老朽化。舞台には雨漏りによる腐食を防ぐシートが敷かれ、照明の3分の1はともっていない。耐震補強どころか、耐震性の有無を見極める耐震診断すら行っていなかった。建て替えという選択肢は庁内でも議論されなかったという。

 最後の日を見守った市の担当者が打ち明けた。「不具合のない状態で市民に使ってもらいたいという思いと、いつまで使うか分からない施設にお金は使えないという財政事情とのせめぎあいだった」

 市は本年度予算に解体費1732万円を計上したものの、跡地利用策は決まっていない。そればかりか、周辺には60~70年代に建てられ、同じような課題を抱える施設が集まっている。その一つの福祉会館は既に廃止。市民が利用するホールなどが入っている青少年会館は代わりの施設がないため、耐震診断を行ってから施設のあり方を判断することになった。

 市の人口は今年3月現在で4万5434人。94年11月の5万4350人をピークに減少が続き、20年余りで2割近くも減った。今後さらに減少が見込まれ、昨年5月には、民間有識者会議の「日本創成会議」から「消滅可能性都市」(全国896市区町村)の一つに名指しされた。

 だが、市内の人口減の状況は一律ではない。94年以降の市内3地区の状況を見ると、三崎地区は6633人減。三浦海岸を抱え横須賀市に接する南下浦地区は2298人減であるのに対し、京急線終着の三崎口駅があり、市北部から中央部にまたがる初声地区は15人増えている。

 こうした中、吉田市長は今年2月、市議会定例会の施政方針演説冒頭で市役所の移転に言及し、初声地区の旧県立三崎高校跡地を候補に挙げた。理由について吉田市長は「利便性が向上するとともに、一層のにぎわいが期待できる」と説明。基幹産業の農漁業に従事する人が減る中、人口を維持している初声地区に公共施設を集約しつつ、三崎地区は観光や産業の拠点にしようとの狙いがにじむ。


 市が人口増加の青写真を描いていた90年代。初声地区には、国体開催を機に市総合体育館「潮風アリーナ」が整備された。厳しい財政事情から、当時のような計画はもはや望めず、施設やサービスの「縮小」が現実の課題となっている。

 3月末で閉館した市体育館の利用者も、5キロほど離れたアリーナに活動の場を移す。

 「体育館にはミニバイクで通っていた。今後は活動の場が遠くなるため、仲間の車に乗せてもらう」と話すのは、家庭婦人卓球クラブの発足当初から参加している松岡真弓さん(77)。「これまで大病もせずに生きてこられたのは卓球をしていたおかげ。外に出る貴重な機会にもなっている」。地元の盛衰を見つめてきた宮本会長が言葉を継いだ。「市の事情は理解するけれど、とにかく寂しい」


閉館直前の体育館で汗を流す卓球クラブのメンバー。一部の照明はともっていない=3月31日、三浦市城山町
閉館直前の体育館で汗を流す卓球クラブのメンバー。一部の照明はともっていない=3月31日、三浦市城山町

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