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高校最速ハードラー世界へ 古谷拓夢 陸上界の新星<3>

スポーツ 神奈川新聞  2015年04月16日 11:21

明神クラブの杉山さん(右)から陸上の基礎を学び羽を広げた=昨年8月、杉山さん提供
明神クラブの杉山さん(右)から陸上の基礎を学び羽を広げた=昨年8月、杉山さん提供

 「おまえ、背が高いからやってみたらいいんじゃないか」。関東近辺の有望な中学生が集まった強化合宿。そこでコーチから掛けられた何げないひと言がハードルを始めるきっかけだった。

 当時中学2年だった古谷拓夢(18)=早大=は伸び悩んでいた。小学5年のデビュー戦で全国大会県予選100メートルで2位に入ったものの、迷いなく進んだ南足柄中陸上部では県4位、5位止まりだった。

 「関東大会に出るには3番以内に入らないとならないし、標準記録も遠かった。早いかもしれないけど100メートルだと限界も感じていたので、気分転換の思いもあった」

 軽い気持ちだった。見よう見まねで他校の選手の後に続いた。「こんな感じかなと跳んでみたけど、ふわっと上がる感覚があって、あれ、意外と行けるじゃんって」。ふわりと未来が開ける予感がした。

  ハードルの練習に本腰を入れたいが、南足柄中の陸上部には専門のコーチがいなかった。古谷は南足柄市を拠点に小学生を指導している陸上クラブチーム、明神クラブに足を向けた。

サッカーから陸上に転向し、中学入学前まで通っていた同クラブでは目立った戦績はなかったという古谷。同クラブコーチ、杉山享三さん(75)も「活躍したかと言われればしていない。スター性はなかった」と思いを巡らして笑う。

 ところが、ハードラーを志した教え子との再びの対面は杉山さんにとって驚きに満ちていたという。「どこで習ったのかと思うほど抜群のうまさだった。踏み切りの歩数にしろ、手足の上げ方にしろスムーズで何の違和感もなくできていた。ハードルはセンスが必要。体の大きさに加えて適性があったんだと思う」

 本格的にスタートしてからわずか1年。中学3年のときに出場した全国中学校大会で4位に食い込み、続くジュニアオリンピックで優勝と一気に上り詰めた。タイムは跳び始めた頃の15秒台中盤から14秒20まで一気に伸ばしていた。

 「中学時代の100メートルは激戦だった。勝てる種目にいったことが(結果的に)良かった」。古谷本人は競技と巡り合えた幸運に何より感謝しているが、杉山さんが見た活躍の要因は古谷とは違うところにある。

 「今まで30年近く指導してきて彼ほどまじめな人間はいない。正直に言って日本の110メートル障害で一番東京五輪に近い選手と思っている」

 小学校卒業にあたり、古谷は同クラブの文集にこうつづっている。「陸上が大好きです。色んな大会に出て自信につながった」-。走る喜び、努力してタイムを塗り替え、結果を出す喜び-。陸上を愛し、トレーニングにひたむきに取り組んだ古谷には高校時代、さらなる飛躍が待っていた。


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