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高校最速ハードラー世界へ 古谷拓夢 陸上界の新星<2>

スポーツ 神奈川新聞  2015年04月15日 10:03

山あいの町に生まれ、野山を駆けまわっていた少年時代の古谷(本人提供)
山あいの町に生まれ、野山を駆けまわっていた少年時代の古谷(本人提供)

 小田原から大雄山線に揺られ、終点の大雄山駅まで約20分、さらに日中でも1時間に1、2本ほどしか走っていないバスに乗り換えて十数分。降り立つと、森を縫うように田が開け、川のせせらぎが聞こえてくる。

 金太郎の舞台となった県西部、南足柄市。自然豊かな山あいで、古谷拓夢(18)=早大1年=は育ってきた。

 「(小さい頃は)野山を駆けまわっていた」とはにかむ。近くにゲームセンターやカラオケボックスはない。近所の公民館や小川が専ら古谷の憩いの場だった。「遊ぶ場所が良い意味でなくて。そこで足腰が鍛えられたかな」と笑う。

 後に世代最強のハードラーに成長するきっかけは、そんな足柄の土地柄も深く関わっている。

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 通っていた市立北足柄小学校は全校生徒50人足らず。進学する予定の中学校は小学校の頃、既に廃校が決まっていた。同級生は男子3人、女子3人。家族のような環境は心地よかったが、スポーツ少年にとっては悲しい現実があった。

 小学1年から打ち込んでいたサッカークラブが人数不足のため4年時に解散した。それまで、身長と脚力を生かし、キーパーと左FWを任されていた古谷は幼くして岐路に立たされた。

 数キロ山を下った隣の小学校のクラブでサッカーを続けることもできる。一方で新たな競技への挑戦も頭の片隅にあった。

 脚力は当時から群を抜いていた。学年一、いや、校内一の俊足と言っても良かった。ただ、それは小さな学校での話。「自分はどれだけ速いのか」。日々抱えていた疑問に答えを出したかったというのも正直な気持ちだった。


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 生まれ持った資質はあった。

 父の幸明さん(53)は静岡・御殿場西高で鳴らした元球児。筋骨隆々とした体形と、投手ながら50メートル5秒後半の俊足を誇った。「ベースランニングなら陸上部にも負けなかった」。そう語る父のばねは長男にも受け継がれていた。

 幼い頃、父に勉強しろと言われた記憶はない。キャッチボールしたり、虫捕りをしたり。そうした日常を送ってきた少年にとって、打ち込むスポーツがない生活はやはり寂しかった。

 「自分の走力を確かめるために一度、大会に出てみようと思った」。ただ、結果は想像以上だった。小学5年時、わずか2回の練習で出場した全国小学生陸上競技交流大会県予選会の100メートル決勝で2位に入った。

 「いきなり2番。もしかしたらこのまま行けるんじゃないか」。この原体験がサッカー少年を陸上選手に変えた。

 振り返り、思う。「サッカーを続けたい気持ちもあったし、もしも他の学校にいたらサッカーを続けていたかもしれない」。偶然か必然か。ひょんなことで陸上界に進んだ古谷は後に主戦場となるハードルと出合うが、これもまたささいなきっかけが生んだ。


古谷の父幸明さん(右)譲りのばねが武器の一つだ=南足柄市内山
古谷の父幸明さん(右)譲りのばねが武器の一つだ=南足柄市内山

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