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胸中語り支え合う 障害ある人のきょうだい自助会

社会 神奈川新聞  2015年04月15日 09:37

「きょうだい会」でのやり取りをメモするめぐみさん。話しているときの感情をカードで表すときもあるという=伊勢原市
「きょうだい会」でのやり取りをメモするめぐみさん。話しているときの感情をカードで表すときもあるという=伊勢原市

 きょうだいが障害者だったり、子どものころに闘病生活を送ったきょうだいがいたりした大人たちの自助グループがある。似た境遇の人同士で特有の経験や複雑な胸の内を語り合い、気持ちを分かち合う。自分は一人ではないと感じる。その活動に注目が集まっている。

 3月下旬、いせはら市民活動サポートセンター(伊勢原市)で開かれた神奈川県央きょうだいの会。2人の女性が過去の体験や今の気持ちを話し合った。

 主宰者のめぐみさん(43)は小学生の時、心臓病の妹を亡くした。子どもだった自分は一人病室に入れず、かやの外に置かれていると感じた。虫歯が痛いと親に訴えても「妹は痛い注射をがまんしているのよ」と取り合ってもらえなかった。

 妹の死後、母親はめぐみさんの行動に強く干渉するようになった。「母にすれば、私はただ一人残された子ども。その気持ちは分かる」。でも、息苦しかった。

 妹がいたことは学校でも職場でも話せなかった。「周囲から『一人っ子として大事に育てられたのね』と言われるたび、つらかった」。インターネットできょうだい会の存在を知り、30代半ばから参加するようになった。会を立ち上げたのは昨秋のことだ。

 めぐみさんと向かい合った会社員の女性(29)には小児がんを患った姉がいる。入院中、「自分の子どもががんになったことを泣いて自責する母を夜な夜な慰めていた」。姉は回復したが、「とても怒りっぽかった」という女性は10代後半から母親や姉と激しいいさかいを繰り返すようになった。

 2人の経験はそれぞれ異なるが、共通するところがあった。

 自分の長所を探すのが苦手で、「普通」にこだわっていた時期を過ごし、物事をマイナスに捉えてしまう-。

 笑い合ったり、目を見詰めて相手の言葉を受け止めたり、話は約3時間、尽きなかった。

 女性は「過去に触れることは怖かったけど、自分自身に向き合えてよかった。話すことで、共感できることや自分の考え方の癖に気付けた」と笑顔を見せた。

 めぐみさんは「同じ境遇でなければ理解しづらい話も『きょうだい会』でなら安心して共有できる。私自身、分かってもらえる人が見つかったことでマイナスの感情に対処できるようになった。生い立ちは変えようがないから、自分のできることから考えていきたい」と話す。


 日本で子どもを含めた「きょうだい支援」の必要性が認識されるようになったのは2001年ごろから。都内で成人向けの自助グループ「きょうだい支援の会」を運営する有馬靖子さん(53)らが米国から専門家を招いたことがきっかけだった。

 会ではさまざまなことが語られる。経験や悩み、家族との関係、傷ついた出来事、支援のための制度や公的サービスなどの情報。つらければ話さなくても、聞かなくてもいい。聞いたことは、外には伝えないというルールもある。何年も通う人もいれば、気持ちが消化できたことで離れる人、一度だけ参加する人など、さまざまだ。

 有馬さんの7歳下の妹は脳性まひで、子どものころから身の回りの面倒を手伝ってきた。妹の介護に忙しい両親に代わって家事をすることもあった。「妹はかわいかったので嫌ではなかった」が、同じ立場の友人はおらず、誰かに話すこともなかった。

 社会に出て支えが必要だと感じるようになった。両親からは「障害のある妹がいて結婚は難しい。自立しなさい」と言われてきた。一方、会社では「女性は早く結婚して、退職するもの」という目で見られた。価値観の違いに悩んだ。「妹の世話と自分の人生とのバランスでも苦しんだ」

 同じような境遇の人の考えが知りたくて、さまざまなグループに参加してみたが、望んだような場はなく、1998年に有志で自助グループを立ち上げた。「こんな大変な状況で、こんな大変な思いをしているのは私だけだ、という孤独感がほとんどなくなった」。多くの経験談を聞き、視野も広がった。「歩けない妹が行くことのできない場所へ行くことには今も罪悪感がある」が、活動で国内外を回るようになり、行動範囲は広がった。「頑張らない人が許せない」という考え方も和らいできた。

 もちろん、会に参加したからといって抱えてきたすべてが解決するわけではないのは分かっている。それでも有馬さんは「20年、30年間、誰にも言わずにいたことを話すのは勇気がいる。でも、一度参加してみたら、楽になるかもしれない」と、自身の経験を踏まえて言った。

 神奈川県央きょうだいの会のホームページ(HP)のアドレスはhttp://ky0da1.blogspot.jp/
 有馬さんが主宰する「きょうだい支援を広める会」のHPでは、全国のきょうだい会や国内外の文献を紹介している。アドレスはhttp://www.geocities.jp/hiromeru_2014/



◆家族支援 社会の問題 明星大・吉川かおり教授に聞く
 なぜいまきょうだい支援なのか。「障害のある人のきょうだい」の調査研究を行っている明星大の吉川かおり教授に聞いた。

 きょうだい支援は、人が健全に育つことを支えるプログラムです。日本では、きょうだいも親と同じく障害者を支えるための「資源」と考えられていました。だから、きょうだい支援が必要という発想もなかった。子どもの権利に対する自覚が弱いため、全ての子どもは支援が必要で、障害児のきょうだいも例外ではないということが忘れられてしまう。

 家族の中に不安が大きかったり、きょうだいが求めていることに応えてくれる人がいなかったりした家で育ち、大人になった人には特有の五つのタイプがあるとされています。「優等生」「問題を起こす子」「いてもいなくてもいいような役割を演じる子」「道化師」「世話焼き」です。そうした状態を引きずっていると、生きていくのがつらくなるといわれている。

 きょうだいたちは、不適応や問題行動を起こすようになって初めて、支援の手を差し伸べてもらえる。しかし問題は深刻化しているので、回復するにも時間がかかる。きょうだい児支援は予防的プログラムだと言う人もいます。早くから支援を入れることで、問題を予防するのだと。

 きょうだい会で得られるのは安心です。お互い全てが分かり合えるわけではない。でも、いろんな人がいるということを分かっていれば、そうだね、大変だね、と共感し合えることはある。自分のことは話さないと整理できないので、素直に話せる場があることは大きい。障害児・者のきょうだいという「得がたい体験」と「特有の悩み」を明確化して自分で納得できる形に変えていくことはできるのではないでしょうか。そして、自分の人生には価値があるとか、生きていてよかったと思える時間が増えていくことが大切です。

 日本はそもそも家族支援に本気で取り組んでいない。障害児・者の親に対しても同様です。家族は人を育てる基盤ですが、親のストレスが大きいままなのに、健全に育てろとだけ言われても無理です。家族支援は社会の問題です。本気で支援を考えなければいけません。


明星大・吉川かおり教授
明星大・吉川かおり教授

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