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高校最速ハードラー世界へ 古谷拓夢 陸上界の新星<1>

スポーツ 神奈川新聞  2015年04月14日 14:01

昨夏のインターハイ男子110メートル障害を制した古谷
昨夏のインターハイ男子110メートル障害を制した古谷

 ただ一点を見据え、跳ねる。行く手を遮るものを跳び越し、突き進む。視線の先には2020年の新国立競技場。全国高校総体(インターハイ)110メートル障害、同400メートル障害2連覇の誉れを手に高校最速ハードラー、相洋高出身の古谷拓夢(18)=早大1年=は広い世界へ走りだす。

 2013年夏。インターハイ110メートル障害決勝のスタートラインに立った16歳はいつにない高揚感とともにあった。

 「リレーもあって疲れを感じていたけど、いつもより体が軽かった。ハードルを軽く跳び越えられるなという感覚でそのまま走っていった」

 当時、スタートは決してうまくはなかった。だが、1台目を軽々越えると2台目、3台目とスムーズに加速。3台目を跳んだ頃には、他の選手は視界にいなかった。

 風を切るごとに爽快感が増した。「緊張してるけどいい感じで力も抜けていた。集中できていたんだと思う」

 1台もハードルに脚を取られずにゴール。振り返り、確認したタイムは12年ぶりに高校記録を塗り替える13秒92だった。「まさかそこまで行くとは」。客席でガッツポーズを繰り返すチームメートに笑顔で応えた。学校の横断幕を肩に掛けてのウイニングラン。2年生にして絶頂へと駆け上がった。



 100メートルのベストは高校3年時に計測した10秒84。短距離のスプリンターとしては突出した数値ではない。

 ただ、古谷は言う。「ハードルはどの選手もスタートしてからゴールまでの歩数が一緒。その中でいかに速く走るかという競技。脚力を技術で補えるのがハードルの面白さ」。強者と弱者を分けるのは持って生まれた力だけではない。

 本職の110メートルで言えば勝敗を決するのはコンマ数秒の世界。歯車が一つ乱れれば、すなわち敗者となる。ハードルが障害物である以上、当然ぶつかれば失速する。いかに正確なステップを刻みながら同じフォームで跳躍し、ロスなく走りきれるか。スタートラインに立つまでに、ほぼ答えは出ている。

 「為末さんは世界選手権でメダルを取ったレースを何も覚えていないと言ったそう。頭の中が真っ白でも400メートルちゃんと走れたということで、それは練習でやっていたことがしっかり染みついていたということだと思う」。400メートル障害で日本記録を打ち立て、世界選手権で2度銅メダルに輝いた先駆者、為末大(36)の言葉にイメージを重ねる。

 全ては反復に次ぐ反復しかない。相洋高の銭谷満監督(48)は古谷の資質を高く評価する。

 「素直で吸収力と探求心に優れている。いろいろな人の意見を聞き入れて、自分に合っているか合っていないかを区別できる」。土台にあったものは素質以上に人間性だったという。



 一躍名を馳(は)せた、あの夏。「自分の転機になったレース」で、つかんだ自信は揺るぎないものとなった。

 最後の夏のインターハイも110メートル障害、400メートル障害を制し、2年連続で2冠を獲得。400メートルは大会史上初の連覇を飾り、本職である110メートルでは1年の秋以降、高校では負けなしの強さを誇ったまま、大学に歩を進める。

 東京五輪のファイナリストという夢は絵空事ではない。だが、18歳はこれまでを顧みて微笑を浮かべる。「偶然なのか必然なのか。もちろん運もあったし、いろいろな要因が重なってここまで来た」。高校最強ハードラーは数奇な運命から生まれた。

 ふるや・たくむ 小学5年から陸上競技を始め、中学2年でハードルに転向。相洋高2年時の2013年8月、全国総体の陸上男子110メートル障害で日本高校記録の13秒92をマークして優勝。同400メートル障害との2冠を達成した。3年時も両種目を制し史上初の2年連続2冠。日本高校記録(13秒83)も持つ。110メートル障害では1年秋の日本ユース選手権での4位を最後に、国内の高校生大会では無敗で卒業した。今春、早大に進学。183センチ、79キロ。南足柄市出身。18歳。


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