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危うさはらむ始動待ち 横浜・北仲通北地区再開発

社会 神奈川新聞  2015年04月11日 10:56

手前の台形の土地が再開発計画地の一画。駐車場として暫定利用されているほか空き地になっている=横浜市中区北仲通
手前の台形の土地が再開発計画地の一画。駐車場として暫定利用されているほか空き地になっている=横浜市中区北仲通

 再開発を象徴するビルが建たない-。横浜市中区の北仲通北地区再開発で計画されている超高層ビルの着工がまた先送りされた。2008年のリーマン・ショック後の計画変更を経て、再び急激な景気変動に翻弄(ほんろう)された格好。折しも日経平均株価は15年ぶりに一時2万円台を回復し、マンション需要も活況を呈す。不動産業界関係者の表情はしかし、晴れない。「実態はバブル。明るい先行きが見通せているわけではない」

 県内の不動産開発会社幹部が嘆息交じりに振り返る。

 「マンションとして売ると想定した場合、半年前の相場なら1坪(3・3平方メートル)当たり450万円程度だったものが、約630万円で落札されていった」

 3月にあった土地入札。都内有数のターミナル駅近くという好立地ではあったが、単純計算でアップ率は約40%に上る。それでも土地を確保していかなければ、他社との競争から置いていかれるという焦燥感がある。

 「都心部から広がり、横浜、川崎、鶴見といった拠点駅の徒歩圏でも土地が奪い合いになっている。マンションの売れ行きが絶好調なのは確かだが、状況は2006、07年の不動産バブルに似ている」

 景況感に確かな手応えがあるわけではない。あるのは、かつてのリーマン・ショックの二の舞いを覚悟した上で土地取得に動いている過熱気味の市況だという。

 土地取得価格の上昇は当然、売価に転嫁される。かつての相場から1、2割高い「新価格」物件は今春から売り出されている。割高でも問い合わせは殺到し、見学会の予約が2カ月待ちというマンションもある。

 購入に動いているのは、国内の富裕層に加え、シンガポールや台湾、香港といった外国人が目立つという。円相場が11年後半のピーク時から約60%も円安に振れているため、マンション価格が20%上昇しても、外国人にとっては割安で買えることになる。

 「このままいけば、やがて実需の消費者の手が届かない価格になり、マンション市場が一気に静まり返る時がくる。業界内では20年の東京五輪まで持たず、19年には崩れ始めるという見通しさえ広がりつつある」

 県内のマンション開発会社幹部は明かす。

 不動産バブルがはじけ、国内経済を冷え込ませたリーマン・ショックからわずか6年余り。県内の建設会社幹部に苦い記憶は新しい。「現状では困らない程度に工事があるものの数年先の状況は見通せない。新たに人を雇い入れるのではなく、非正規雇用や外国人の技能実習を受け入れてしのぐ策が正解かもしれない」と絞り出した。

 こうした中、北仲通北地区で着工が先送りされた高さ200メートルの再開発ビル。建設コストの高騰とマンション需要の高まりを受けた設計変更がその理由だ。

 完成は東京五輪の1年前の19年夏になる見込みで、事業関係者は「外国人の需要を当て込んで市場調査をしている。完成が東京五輪に間に合うのは大きい。富裕層が欲しがる間取りや質に仕上げる」と話す。

 一方、外国人ニーズを当て込んだ開発に横浜市の担当者は不安を隠さない。「再開発はビルを建てることが目的ではない。ちゃんと定住してくれるといいのだが」

 数々の不確定要素をはらみつつ、大規模プロジェクトが動きだそうとしている。

「景気回復、猶予は2年」


 景気回復の兆しがのぞく市況だが、中小企業の業績改善は道半ばとの見方もある。企業の信用調査大手・東京商工リサーチの友田信男情報本部長に実体経済の動向と景況感、今後の見通しを聞いた。


東京商工リサーチ・友田信男情報本部長
東京商工リサーチ・友田信男情報本部長

 景気回復にかけられる猶予は実はあと2年しかない。2017年4月には消費税が2%引き上げられ10%になる。それまでに足腰の強い回復にこぎ着けなければならない。

 アベノミクス効果によって企業業績は二極化してきた。上場企業を中心に株高の恩恵を受け、全体としてみれば底上げしているといってよい。広がりも出ており、建設業界も業績改善が著しい。

 だが細かくみると大企業と中小・零細、都市部と地方という構図で二極化が進んでいる。

 例えば、増収増益企業が全体(約5万5千社)の35%に上る一方、利益面のみをみれば約4割は減益になっている。

 昨年4月に消費税が3%上がり、物価を引き上げる金融政策を打ち出しているため、売上高は必然的に上がる。問題なのは増益できていない点だ。大企業の賃金引き上げは前向きに捉えられているが、中小企業は従業員の確保や引き留めのためにやむを得ず賃上げしているのが内実だ。

 本来なら業績の好転を受けて賃上げされるべきだが、現状は改善への期待に賭けているにすぎない。

 こうした意味でいまの株高や雇用の拡大、賃金上昇は足腰の強い本格的な景気回復を裏付けているとは言い難い。大企業の好業績が取引先である中小、下請け、孫請け企業に波及する「トリクルダウン」にならなければ、本格的な景気回復には結びつかない。


倒産件数と負債総額の推移
倒産件数と負債総額の推移

 倒産件数は確かに減少しているが、政策誘導的要素が色濃い。今年1月20日には金融庁が債務超過に陥っている企業にも融資してよいという検査指針を出した。政府は打てる金融施策をほぼすべて打った。これが最後の一手ではないかと思う。


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